「温石」と書いて、おんじゃくと読みます。
私が「温石薬石整体」という治療法を始めて、30年になります。
温石そのものの歴史は、もちろんそれよりはるかに古いものです。
人類と石との関係は石器時代まで遡ります。
金属を使うよりはるか昔から、人類にとって石は生活を支える重要な道具でした。
そして後の時代には、石は人を治療するための道具としても使われるようになります。
中国には「砭石(へんせき)」があり、日本には「温石(おんじゃく)」がありました。
温石とは、文字通り、石を温めて使うものです。
奈良・平安時代にはすでに存在し、石を温めて身体を温める、いわば現在のカイロのような使われ方をしていました。
また、防寒だけではなく、温めた石を患部に当てるなど、治療のためにも使われていたと考えられています。
「懐石料理」の「懐石」も、この温石に由来します。
禅僧が温めた石を懐に入れ、寒さや空腹をしのいだことから、「懐石」という言葉が生まれたとされています。
日本には昔から、灸、温灸、温石灸など、「温めること」を治療に利用する文化がありました。
私は、この古くからある「温石」と「温熱」を、自分の治療に取り入れました。
温石薬石整体では、さまざまな大きさの石を熱湯で温めます。
それをタオル越しに、着衣の上から身体へ押し当てていきます。
私はこの方法を、
「温石圧(おんじゃくあつ)」
と呼んでいます。
手で押される感覚とも違う。
ただ温められる感覚とも違う。
温められた石による、
「温」と「圧」が同時に身体に入ってくる。
これは、実際に受けてみないとなかなか言葉では説明できない、独特の感覚です。
そして私が、経絡や経穴への刺激と同じくらい大切にしているのが、温熱の作用です。
熱湯で十分に温められた石からは、熱がゆっくりと身体へ伝わります。
また、温められた石からは遠赤外線も放射されます。
温石圧を受けた方からよく聞くのが、
「表面だけではなく、身体の芯まで温まった感じがする」
という言葉です。
施術が終わったあとも、身体にはポカポカとした心地よい温かさが残ります。
しかし、温石薬石整体は、単に温かい石を身体に当てるホットストーンセラピーではありません。
どこを温めるのか。
どこに圧を加えるのか。
そこには東洋医学の経絡・経穴論があります。
さらに、私が治療を組み立てるうえで大きな影響を受けたのが、澤田健の太極療法と、増永静人の経絡指圧です。
腰が痛いから腰だけを治療する。
肩が痛いから肩だけを揉む。
私はそういう考え方ではありません。
局所だけではなく、身体全体を診る。
そして、身体に現れる**「虚」と「実」**を捉え、そのバランスを整えていく。
温熱・遠赤外線。
温石による圧。
経絡・経穴。
太極療法。
虚実。
そして手技療法。
これらを学び、参考にし、実際に人の身体に触れながら、30年間の臨床の中で組み立ててきたものが、私の**「温石薬石整体」**です。
「薬石」という言葉には、薬やさまざまな治療法という意味があります。
「薬石効なし」の、あの薬石です。
一つの治療法だけにこだわるのではなく、さまざまな治療の知恵を取り入れ、人の身体を全体として診る。
そんな意味も込めて、私はこの治療法を
「温石薬石整体」
と名付けました。
施術を始めて30年。
これまで4万人を超える方々の身体に触れてきました。
これからこのアカウントでは、温石薬石整体とはどのような治療なのか、その歴史や理論、そして私が実際に経験してきたさまざまな症例について、改めて紹介していこうと思います。
