桜が満開になった日

夫との思い出の桜を見に行った

枝いっぱいに見事に咲いた花びらは 心の中でふわりと広がった

あの時 彼が逝ってしまった後で見た花は

その美しさが かえって心に刺さって悲しかった

 

でも今は 彼がまだ元気だったころ 

二人でゆっくりと見た あの幸せだった思い出の方が蘇る桜

 

そのふんわりした気持ちのあとに乗ったバスの中

幼児を一人を胸に抱き もう一人の 5 ~6才くらいの男の子を連れ

ベビーカーを持った若いお母さんが乗って来た

3人とも運転手さんのすぐ後ろの席に座った

 

バスを降りる合図のチャイムを押したがっていた子が

タイミングを逃して がっかりしている様子を見た運転手さん

何かの操作をして

  ぼく 今 ピンポン押してごらん

と笑顔で語り掛けた

男の子はそれを聞いて 張り切って ボタンを押す

  ♪ピンポ~ン♪

その音に 飛びあがるほどに喜んで お母さんの顔をみてうなずく

お母さんも満面の笑顔でうなずき返した

 

私がバスを降りようとすると

ちょうど その親子も同じバス停で降りるところだった

私は 折り畳んでいたベビーカーに手をかけて

  私これ持って降りますから お子さん抱いていて大丈夫ですよ

そう言って べビーカーを持った

実際に持ってみると 思ったよりもずっと軽くて

ちょっとホッとした

実は一瞬 重くてスマートに降りられなかったり

転びそうになったら どうしようと思っていたのだ照れ

 

後からゆっくり降りて来たお母さんにべビーカーを渡すと

彼女はとっても喜んでくれた

 

私は二人の子供たちに手を振り

降りたバスの前の 横断歩道で 信号待ちをしていた

頑張ってみて良かったな と嬉しくなっていた

すると どこからか

  ”お客さん 先ほどはありがとうございました!”

という声が聞えた

いったい どこから?

見回すと 何と 今降りたバスの運転手さん!

マイクを使って私に声をかけてくれていたのだ

私はびっくりして 思わず深く頭を下げて ほほえみを返した

何と言う優しい運転手さんなんだろう!!

 

青信号に変わって 一歩踏み出したとき

足取りは すごく軽く感じた

もう一度 窓越しに見える運転手さんに 頭を下げながら 

停車しているバスの前を渡って行った

 

先ほど見た桜も すごく綺麗だったけど

そのバスの運転手さんの 優しい心遣いに 

ふんわり桜色の思いが 胸の中いっぱいに広がっていったぽってりフラワー

 

お蔭で 私は一日中 幸せだった音譜