裏通りを歩いていたら
こぶしの木に 白い花が咲いていた
まだ蕾も多いけれど 開いた花は 春の風に揺れながら
嬉しそうに「春ですよ~」と呼び掛けている
そう 春ですね
私は思わず 返事をする
今年 この春の訪れを 何と静かに味わえることか
この数年 何かと喪の行事が続いた
特に昨年は 年初からずっと兄のことで 思い煩うことが多く
悩み 落ち込み 焦り… そして時に 疲労による 体調不良
そんな日々が続く一年だった
娘たちとその家族の 温かい思い遣りや優しい気遣いが
私の心を熱くする時もあったけれど
当時の私の心は 意識のどこかに常に何かがひっかかり
様々な思いで揺れていた
でも今 全ての事を成し遂げた後は
静かに振り返り その時の哀しみにも浸ることもできる
全ての事にただひたすら向き合って
何とか乗り越えて来た 今だからこそ
できることなのだろう
そして 心ゆくまで 哀しみに浸れた今の私には
周りの人たちの温かさが 一層深く心に沁みる
今は… ほんのわずかの春の兆しさえ
大きな喜びとなって 私の中を熱くする
本当に 本当に久しぶりの 純粋な喜び
一点の曇りもない 私の胸の内
世の中の動きに ふと不安を覚えたり
いったい何が真実なのか 苛立ちを覚えることもあるけれど
それらの思いに 過度に引きずられることのないように
目の前のことに集中して 過ごして行こうと思う
ただ 世の中のために もし私にできることがあるのなら
私は喜んで やりたい
でも今は 何をすればいいのか分からないし
何をするのが正しいのかも 分からない
だから今は 自分の目の前のことを 精一杯やっていく
せめて 周りの人の笑顔を 見ていけたら 幸せだと思う
それが 周りの人から 多くの人の笑顔にまで広がっていけば
こんな嬉しいことは ないのだけれど
今 花開いていくとき
その 穏やかな時の流れを 心ゆくまで楽しみながら
通りを歩く
これらの花が 私を笑顔にしてくれるように
私自身も 誰かを笑顔にできるなら…
静かに その思いを噛みしめながら歩く
この穏やかな時の流れに 感謝しながら…