何気ない日常を過ごしていた時
急に 電話のベルが鳴った
遠くに住む姪からだった
ふと胸騒ぎがする もしかして…
次兄が癌に罹患していることは知っていたが
治療なしでも 日常生活にも困ることなく
最近まで 近くの買い物にも出かけていた
1週間前 その兄から電話があった。
ちょっと酸素濃度が低くなって 少し入院するけれど
落ち着いたら また退院する様子だった
声の調子も いつもと変わらなかった
でも 姪からの電話は
今日 他界しましたという知らせだった
すぐ上の姉は 18年前に他界している
半年前には 長兄と別れ 今また次兄と別れ
四人兄妹だったけれど 私一人だけ残ってしまった
でも年齢から考えると仕方のないこと
末っ子って かなり寂しいな と ふと思った
……
気づくと まわりの木々の新緑が鮮やかで 美しい![]()
何事もなかったかのように 自然は淡々と
その素晴らしい営みを 繰り広げている
その偉大さに気おされそうにもなるけれど
今は その懐に抱かれていようと思えてくる
実は 以前から娘婿のお母さまと 二人で旅する約束をしていた
こんな時 どうしようかと少し迷ったけれど
何と娘婿が 二人の年老いた母のために
車を出して 連れて行ってあげようと申し出てくれた
何という優しさ…
婿はとっても良くできている人なので
私はいつも 少し恥ずかしく 年甲斐もなく緊張する💦
娘はそんな私を知っていて
お母さん 断ってもいいよ
と言ってくれた
でも私は その大きな優しさを 受け取りたいと思った
今度の旅は きっとその私の緊張をも 克服させてくれる気がしていた
何より 彼のお母さまも一緒なのだし…
自宅から 彼の車に乗せてもらって出発
二時間ほどで お母さまの待つJR駅で合流
お母さまとの二人旅は これで5回目
よく考えたら 何とも不思議な組み合わせ
互いの結婚相手の親と これほど親しくなるのも 珍しい気がする
彼の周到に準備した計画に添い まず苔むした石橋を見て回った
何とも風情のある景色だ
彼がいなかったら こんな風景には出会えなかっただろう
夕方には私たち二人をホテルに送り届けて
彼は少し離れた別のホテルを予約していた
老婆ふたりで 温泉に入り 夕食を済ませ
夜は若いころの女子旅のように 色々と話がはずむ
翌朝 私たちの宿に 彼が車でお迎えに
何とまあ 贅沢なこと
前日の雨もすっかり上がって とてもいいお天気の中
遠い昔に彫った摩崖仏などを 見てまわった
数百年もの樹齢の木の幹に触れて その大いなる気をいただいたり
そんな中で 私の心はゆっくりと癒されていった
ゆらゆらとゆれる木漏れ日の下で
私は 父母、姉、兄たちの姿に 心の中で手を合わせた
そのうち私もそちらに行きますから よろしくね
白い雲がゆっくりと流れてゆく
娘婿の K さん 本当に 本当にありがとう…
お礼の言葉も見つからない
お母さまもきっと こんな優しい息子を 誇りに思っているでしょう
この怒涛のように過ぎた 1週間あまり
今静かに 哀しみをかみしめ 感謝の喜びを味わっている
何とありがたく
しあわせなことか…
私の感謝の言葉は 木の葉をゆらしながら
風といっしょに 空にのぼっていく
新緑の中で…