6月

いつもなら 梅雨の季節

でも今

空は青く澄み 風が緑の木の葉を揺らしながら

私の頬をそっと触って 吹き抜けてゆく

短い期間かもしれない

けれど 本当に本当に有難いとき

 

梅雨の どんよりとした空の色

身体にじわっと 纏わりついてくる部屋の空気

それらを思い出すと

今のこの空気が 素晴らしい贈り物に思えてくる

 

 

先日 友人の A さんに会った

彼女は認知症のすすんでいくお父様の介護をしながら

毎日頑張っている

  3日間ショートステイが決まったから

  そのうちの一日会いませんか

というお誘い

私は飛びつくように OKの返事をした

 

まず最初に お父様の状態を尋ねる

会うごとに その症状が進んで行っているのがわかり

胸が詰まる

 

2カ月ほど前 海外で働く息子さんの一人が 帰国して

その間に A さんは 2度ほど一人旅をしたという

鹿児島に2泊したという彼女に 思わず訊いてしまった

 2泊したんだったら どこか行ったの?

 

彼女は笑いながら

 ううん、どこも。 温泉につかって景色を眺めて

 後は ひたすら寝たのよ

 いくらでも 寝れた

その答えに 日頃彼女が いかに眠れていないのかわかり

そうだよね…としか言えなかった

 

 

私達は確かにお互いに性格も異なるけれど

理想とするものや 価値観 世の中への違和感など

共感することが多い

だから 前提なしですぐに話の中に入ることができるので

とても満ち足りた時を過ごすことができる

 

増して 彼女の特異な才能には 様々な気づきをいただく

何気なく会話している その合間に 

彼女の中に あるイメージが浮かんでくるという

そのイメージを読み取って

彼女は私に その意味を伝えてくれる

 

そういう彼女の言葉が 私のもやもやした気持ちにヒットして

カラッと心が晴れてゆくことも多い

何と有難いことか

 

ただ私にはそんな能力はないので

彼女へのアドバイスは なかなかできない

それでも 彼女は私と話すだけで嬉しそうにしてくれる

 

喫茶店で長い間おしゃべりした後

外に出ると 初夏の日差し

彼女は満面の笑みでつぶやいた

  この気持ちのよい天気 有難いね!

 

その彼女を見て 私も思わず笑顔になる

毎日大変な生活をしているのに

少しも疲れた顔を見せないのは

彼女の心が 疲弊していないからだろうか

 

梅雨の前の この清々しい空気を喜ぶ感覚を

持ち続けていられることに 彼女の心のあり様が伺える

 

 

この心地よい空気を 運んで来てくれた風さん

本当にありがとう

 

このまま空梅雨になって 水不足になるかもしれないし

突然の入梅のあとには じめじめした日々が来るだろう

あるいは 大雨もあるかもしれない

 

でも 今は…

短いかもしれない このプレゼントを

全身で味わっていよう

 

今は…

 

この心地よい風の贈り物

たくさんの人たちが 喜んでくれているといいな