このところ続けて 不思議な世界の物語に出会った

心に響いた「ツナグ 」と 「結ぶ」 という言葉

あちらの世界とこちらの世界を「ツナグ」人

時の流れを よじったり絡めたりしながら「結ぶ」組みひも

 

既にこの世を去った人と その人に会いたいという人

彼らを繋ぐ役割の使者(ツナグ)の物語

辻村深月の作品である

 

依頼を受けて 実際に両者を会わせるいくつかの場面から始まり

後にそれぞれの死者と会いたい人の思い

実際に二人が会った時の様子が 描かれてゆく

 

まるで謎解きのように進められてゆくこの物語の中で

私の心は 魔法をかけられたように 揺れていた

 

様々に異なる設定の話なのに いつの間にか それらの話も繋がってゆく

みごとな構成で 魅惑的であることも確かだけれど

それ以上に それぞれの人の心の動きが 私を惹き付けて離さない

死者と依頼人と 

そしてまた両者をとりもつ「ツナグ」自身の

とまどい 思い 哀しみ 怒り… 

それらの感情が これでもかというように 押し寄せて来る

 

代々伝わるその仕事を 引き受けることになった いきさつにも

震えるような驚きと痛みを覚えた

 

ツナグが依頼人と向き合う時には

そのような深い感情を 心の奥底に閉じ込めて

淡々と事務的に接している 

そんなツナグの様子が いっそう その心の重さを感じさせる

 

新海誠監督によるアニメ作品でも

『すずめの戸締り』では

偶然に知り合ったように見える二人が

目の前で起こった不思議なできごとに ただひたすら向かっていくうちに

互いの心を感じ取り 力を合わせ かけがえのない相手となってゆく

 

『君の名は』の中で描かれる 組み紐

まっすぐに伸びて よじれて 絡まって…

 

時代もずれて 互いの身体も入れ替わりながら

時折何かのきっかけで 繋がる時がある 

 

物語全体の流れを象徴している その赤い組み紐は

少女の髪で ずっと揺れていた

 

現実にはあり得ないような世界

でもそこで思うこと 感じることには 心の底から共感できる

登場人物の心模様が 私の心に響く

彼らの思いが 心の奥の糸を震わせる

いつの間にか 私はその世界の 真っ只中にいる…

 

私には唐突なことには思えない

やっぱり…という感覚の方が大きい

そして その世界の中のできごとは 私にとっては「真実」だと思える

 

 

『ツナグ』の世界の余韻にひたりながら ふと思う

私が会えるのが 一人だけだとしたら 私はいったい誰を選ぶのだろう

余りにも多くの かけがえのない人に別れを告げてきた今

一人だけを決めるのは かなり難しい

 

そして私があの世に行ったあと 私に会いたと言ってくれ人がいるだろうか

 

いえ それらは今はもう どうでもいい気がする

会えなくてもいい

思うだけで きっと繋がるから

 

組み紐のように紡がれた時間は

それがどんなによじれていても 絡まっていても

私が意識を向ければ

ある時は進み ある時には戻りながらも 

私は きっとそこに辿り着ける 

もしもそれが 私にとって本当に大切な時ならば…

 

よじれた紐も時間も そのままで 

私は そのままの流れの今を 生きていく

 

 

こんな素敵な世界への きっかけを作ってくれた

中学生の N ちゃん ありがとう

 

あなたがいるから 私はともすれば忘れそうになる

こんな新鮮な世界を また思い出すことができた

 

ここでは N ちゃんが私と物語の世界を取り持ってくれた ツナグだよね

そして こうして色々な世界を「結んで」くれたね

 

ありがとう