映画『孤獨の人』
とにかくすごい映画だ。
メインに出てくるのが皇太子(現今上)なのだから。
私は目白(東京都文京区)の学校に通っていた。(学習院ではない)
目白駅近くのビリヤード場に皇太子(現今上)がビリヤードをやっている写真が貼ってあったりしていたので、戦後民主主義の「恩恵」にあずかったかなり自由だった唯一の皇太子だったと思っている。
そのためかかなり発言にも自由があり、後にどこからか「規制」されたと思っている。
背景は学習院高等科3年。
そこに皇太子がいて、みんなから「殿下」と言われている。
しかしはっきりと顔は写らない。白手袋だったり、後ろ姿だったりする。ただし声はよく発声する。演じているのは黒沢光郎という俳優である。
高校生活はかなりリアルに描かれ、屋上でみんなで煙草をすったりしている。
私がこの作品を観たかったのは芦川いづみが出ているからだ。
タイトルロールの出演者としては5番目に出てくる。ずっと後に小林旭の名もあったが、ちょい役と思ったらなんとなんと助演である。主演は津川雅彦。
小林は殿下とは初等科からの「御学友」。
原作の藤島泰輔は御学友だった。
青山恭二が旧伯爵家の出て幼稚園からの御学友である。
テーマとしては中等科から学習院に入った津川雅彦が御学友に選ばれる。
芦川いづみが出てくるのは、殿下かが帰りの車の中から小林が女子学生と歩いているのをみかけるところ。
車の中からの撮影であり、遠景でもあるが、私には芦川いづみだと分った。その間約3秒。
殿下はあきらかに女性に関心を持っていて、白手袋を握りしめる。後に小林のつきあっている女性がどのような女性なのかを御学友に問うている。
修学旅行で奈良に行く。
新聞に宿泊する旅館(菊水)から朝夕の献立までが載る。
殿下が級友と同じ屋根の下の宿泊をしようとすると、折角突貫工事で作ったのだから是非離れで寝てくれと女将が言いに来る。それが叶わないと分かると松を植えてくれと懇願し、それは聞き入れられる。
小林が芦川と出会ったのは葉山の海岸。
芦川が波打ち際に近い低い岩場で本を読んでいて、小林が偶然上から下る道で通りかかる。小林を見上げる芦川のキュートさはちょっとないくらい良い。
芦川は淳子という。淳子が小林(岩瀬)の名前を知っていて、小林は驚く。なぜ知っているのかというと、殿下と一緒にヨットに乗るところを見たからだと言う。つまり御学友は有名人なのだ。
何回かのデートで小林がキスしようとすると拒絶される。
芦川は信用していたのに、と言う。なぜ信用したのかと問うと、御学友だからと答える。小林は殿下との関係を複雑に思うのである。
小林は殿下の不自由を思い銀座の夜の散歩に誘う。
寮を出て目白駅まで歩き山の手線に乗る。
日活は銀座と全く同じセットを持っていたので、そのセットだと思うのだがロケに見えたのだ。
鳥ぎんの看板のある所を通り、ジュリアンソレルの角(並木通りとみゆき通りの角)で偶然津川と彼が付き合っている叔母(月丘夢路)に出会う。
かつてジュリアンソレルの二階に喫茶店がありよく利用した。窓際にロッキングチェアのあるテーブルがあり、街行く人が見えた。
津川が月丘夢路の部屋に行くときは、バスで六本木で降り、大きな花屋の中をとおり階段を上がるのである。ゴトウ花店の上がアパートになっている感じだった。
その散歩で入った店(お茶とケーキ)で支配人が挨拶に来るという特別待遇され(店の客に岡田真澄がいたが、出演者ロールに名はなかった)不愉快になり外に出てしまうが、殿下は花売りの少女から買った花束をずっと大事に持っている。それは殿下にとっていい想い出だったと思わせる。
ところがその散歩が侍従や大夫で問題になり、小林は殿下のためを思ってと言って涙する。そして高等科を卒業するので、車で帰る殿下に「さようなら、殿下」と言う。
清明寮(これは実際にあった。皇太子明仁親王のために新設された)から殿下は車で帰るのだが、どこへ帰るのだろう?東宮だろうか?
この寮には侍従室も大夫室もあるように見えた。
銀座で偶然あった津川はスーツ姿で、その後月丘とダンスをしにいく。
ところがいつしか学ランになっていて清明寮に駆けつけるのだ。
しかも、東宮(違うかもしれない)の門前まで行き、ひとり坂道を下って行ってエンドマーク。
学習院付近は急な坂があり、どう見ても目白ではないように見えた。
芦川は最初に出て来た3秒のシーンから、次に出てくるのは50分後!ウェストのしまった白地に大柄のプリント(多分)が入ったフレアースカートのワンピース(ちなみにこの作品はモノクローム)の服を着ている。カカトの低いスリッポンをはいている。
小林の「何していたの」という問いかけに「ご本を読んでいたの」と答えるのだが、このセリフがまた良い。
次のデートは黒のサマードレス。やはりウェストはしまっている。
しかし扱いは添え物。
但し、小林旭との共演でラブシーンまであるのはとても珍しいのではないか?『やくざの詩』以外にないのでは?
この映画のテーマはなんだろう?と考えるべきではないことについて考えてしまった。
小林は殿下を銀座に連れて行ったことを責められ「日の丸とバンザイの中でしか殿下は歩いてはいけないのか」と訴える。侍従は我々の責任問題と言い放つ。
修学旅行で妹への土産は小林に買ってきてもらう。殿下は外出するつもりでいたのだが、自粛するのだ。
皇族に自由を!がテーマではないと思うが…
備考
男女交際で「もうBIしたか?」と聞くのだが、意味不明。
1957年日活16mm82分
監督:西河克己、原作:藤島泰輔、脚本:中沢信
