1933年松竹蒲田の作品。
貧しさから芸者になった少女照菊(水久保澄子)は親切にしてくれる姉さん芸者のひとり息子義雄を好きになる。妹弟ばかりだから兄のような存在として慕っている。義雄は母ひとり子ひとりだが、母親が芸者の為学校も休みがちでグレてしまう。母親に意見されてクサっているところに照菊が実家に行くところを誘われる。
一輛の電気軌道列車、トロリーバスのように電気を取っている。神奈川県かもしれない。漁村が彼女の実家。父親が仕事せず、貧しさの為妹も芸者に出す相談で実家に来たのだ。照菊は妹だけは汚さないでくれと父親に懇願する。
照菊の貧しさを知った義雄は不良グループから抜けようとする。抜けるために初めて黙って殴られていたが、「みずてんの倅」と言われて逆上してしまう。
そして止めに入った照菊が刃物の疵を負ってしまう。
病院のベッドで手を握る。
ラストは省線の「しながは」駅。
照菊は妹を芸者に出さないために自分が住み替えをして遠方に行く。
「あたしがあなたを好きだったことを忘れないで」と義雄に言う。
「母親がいなければ一緒にどこへでも行ったのに」という義雄。
汽車に乗った照菊、義雄と別れてエンド。
照菊を演じた水久保澄子が美しい。当時17歳。そして常に笑顔を浮かべていて、強さを感じさせる。その強さが哀感を誘う。
実際に水久保澄子の人生は波乱万丈。
サイレントは、聞こえない、文字にもならないセリフをどう「聞くか」が面白い所でもある。場内の静けさが悲しみを倍増させる。
ピアノ伴奏は神崎(こうざき)えり氏。終幕後に聞いたら演奏は全てアドリブとのこと。
成瀬らしい作品だった。
脚本:成瀬巳喜男
撮影:猪飼助太郎
