第67回東京都高等学校演劇コンクール地区発表会
中央地区B日程2日目(2013.9.29於:都立晴海総合高校)
審査員は、上野友之氏(劇作・演出)、篠原久美子氏(劇作)
晴海総合高校講堂で開催された。講堂とは言うものの客席150の立派な「劇場」。ホリゾント、照明、音響など揃っている。
十文字高等学校
『SA・KU・RA』(作:きさらぎ優)
空襲で防空壕に閉じ込められた女学校生徒たちの心情露吐。モノローグと会話のメリハリが難しいか。軍国少女と聖戦に対する猜疑の間を彷徨う。空襲警報や空襲を音響で表現し、装置は可動式のパネルのみで、それを動かしたり、それで音を立てたりと工夫。本が盛り込みすぎでテーマがぼけたかも。非国民という言葉はあるが、天皇がないのは不自然かもしれない。途中のコーラスはよかった。1945年4月25日のめいか女学
校の実話が元か。
講評
戦争テーマでモノローグが多い難しい台本。熱量あり一人一人が個性的。閉じ込められた人々に関係性の展開が無いと苦しい。特殊状況にリアリティーを持たせるのはウケの演技。自分のセリフにエネルギー一杯だと状況を作れない。パネルを動かす人が見えると、リアリティーが殺がれる。役者がいいのでもったいない。
誠実な稽古が思われる。台本に向かっていてヌケが無い。コーラスがよかった。ラストはベタだがまっすぐ届けたストレートさはいい。誰に向かってセリフを言っているかは重要。気持ちを作りすぎると声が上ずる。顔が暗い。えり明かりで端が暗くなる。リハーサルでえり明かりエリアを把握しておく。閉じ込められてから人々の本音が出てくるが、作者の価値観を話しているようにも思えるので、それは演出でカバーできる。
都立竹早高校
『エンブリオ!!!』(作:松本英子部員、演出:三浦祐子部員)
八戸で郷土芸能「えんぶり」を舞う部員集めに奔走する。地方と都会の対比、そして仙台アイデンテイーティー。なかなか工夫された本と演技で、チャリ役の「イカの精」も生きている。「えんぶり」と「エンブリオ」の掛け言葉が妙味あり。
講評
面白い。イカの特殊性とリアルな人間関係の普遍性のバランスが良く、これは名作の条件。熱意のある人は人を傷つけ易いが魅力があるという設定がリアル。時間の関係でセリフにヌケがあり、それが伏線の回収になっておらず(イカになった理由など)残念。
小ネタ多く幕後に語りたくなる作品、モブたちがちゃんとしていた。オープニングの音楽がスターウォーズだったり、アニメ的なところもある。センスを感じる。セリフの間が長くテンポ早くすべき。
都立晴海総合高校
『鏑木清子は沈黙した。』(作・演出:水野由希菜部員)
鏑木清子が殺人の容疑で裁判で無罪になったと言う。少年じゃなかったのか?という疑問を終幕まで引きずってしまう。ダンボールの箱を色々に使う。理不尽な戦争、正義の意味、など情報過多でしかもメタファーが多く感じるので観客への要求が厳しい。セリフがまだ自分のものになっていない。
講評
ト書きの無い台本、独特でオリジナリテイーがある。ラストに作家の明確さを感じる。会話とは相手に影響を与えること、セリフを言うことへ意識がいっていて会話になっていない。主張するセリフが多く、舞台前で吐露するばかりではないはず。
魅力的な部分を持っていて可能性大。人に理解してもらおうとする他者性がない。分かり易さを提供するという努力がほしい。関係性が切れて相手が死んでいくが、死者の声が無視されている。
日本大学豊山高校
『極楽トンボの終らない明日』(作:高橋いさを、演出・脚色:豊島拓海部員)
スラップスティックス。刑務所内で演劇をやるというプロットは面白いが、イタリアには実際にある。その活動を映画にした『塀の中のジュリアスシーザー』があるし、無期懲役囚のアニエッロ・アレーナAnielloArenaが商業映画の主演をした『Reality/リアリティー』(マッテオ・ガッローネ監督2012年イタリア・フランス映画)という映画もある。
講評
センスよくうまい役者が揃っている。90年代の軽薄短小時代に書かれたエンターティメントでよくできている。エンターティメントは完璧なディティールが求められる。スタッフワークの緻密な連携も必要。照明にはSS(私注:サイドスポット)があってもよかった。バックサスは最初から舞台にあったので驚きがなかった。
男子だけでエンターティメントができるのは羨ましい。脱力でおもしろいことができ、さらに観客とコミュニケーションがとれている。台本外の笑いもあった。セリフが音響に消されたところがあったので残念。
つづく