高島野十郎展 三鷹紀行 2006年07月13日
7月11日に三鷹市民ギャラリーへ没後30年である高島野十郎の展覧会を観にいった。これはボラさんからもらったチケットがあったからだ。
野十郎は蝋燭の絵で知られているが、はじめて体系的に作品を観たのだが、写実画を見るのは本当に久しぶりなので、「絵を見た」という気持だった。
彼の「初期」の作品は、東京大学の水産学にいた時の魚類や骨標本のスケッチだが、それは見事なものだった。また、自画像が3点あったのだが宗教的な(仏教)背景があるためか鬼気迫るものがあった。
蝋燭の絵は実は何点もあり、知人の贈ったものが大半であったと言う。ある部屋に並べられた10点に近い蝋燭の絵は、まるで炎が揺れているようだったが、その作画の動悸について知りたいと思った。
美術館を後にしたのが、午後4時頃だった。
いつものごとく去りがたく、初めて来た三鷹駅周辺を彷徨った。もともとジャズの店を探してはいたのだが、「ジャズ批評」2005年9月号の日本列島ジャズの店特集に三鷹は1軒もなかったのである。ただインターネットでボーカルのライブをやっている店があったことは確認済だった。
駅の北口方面に行き、小川(玉川上水だと言う)を見たり、古本屋をのぞいたり、和菓子屋を見たりしていた。すると交差点の角に居酒屋があり、店の前の黒板に「エビス生ビール」「水ナス塩もみ」と書いてあり、グッときてしまった。
若い男性が店内に一人いて、開店時間を聞くと5時半だと言う。あと30分時間があった。
三鷹駅の北口に出てから右手に行くと、工事中の白いスチール塀が立っていて、その奥に石碑のようなものが見えた。足元の悪いところを2,3歩入るとその石碑が見え、人物の肖像があった。よく見ると国木田独歩のものだった。
そういえば「武蔵野」なのだった。
さて、30分ほどの時間つぶしをしてから、先ほど見かけた店に戻った。縄のれんにコの字型のつけ台(カウンター)だけの店で、窓を開け放し薄暮の街が見渡せる趣向になっていた。
つけ台に座ると、まず箸置きを渡された。その時の予感は「器に気を配る店」といったものだが、後に分かるのだがそのとおりだった。
生ビールを頼むと、タンブラーで出てきた。エビスの生である。付け出しは「トウモロコシとインゲンの煮物」で味がいい。
そして、水ナスの塩もみを貰う。さわやか、まさしく「いい夏」を感じた。
落ち着いて店を見渡すと、「モツ焼き」も「煮込み」もやっている。どちらかと言うと「モツ焼き」がメインのようだった。まずは「煮込み」を注文した。
この煮込みは作りおきしておくものではなく、注文があってから一人用のフランパンに作られて出てくる。味噌仕立てのシロを中心とした煮込みで美味だった。
飲み物は芋焼酎に力を入れているようで、ブレンドというものを貰った。これは説明書きによると、店主の好きな三種の芋焼酎をブレンドしたものだと言う。これをロックで呑んだのだが、マイルドなのだが芋特有の香りがあり、すぐおかわりをした。
徐々に紫に暮れていく街並みを見ながら、なんとなく消極的に調べておいた「ジャズとボーカルの店」が7時半からだということを思い出し、時間的に丁度いいと思いその店を出た。「モツ焼き」はこの次に来たときだ。
その店は「婆娑羅」と言う。
婆娑羅を出た後、玉川上水に沿って歩いた。川に下りて見ると、川面に小さな波紋が頻繁に浮かぶので凝視するとアメンボだった。また、川の中にはザリガニや小魚がいた。川を渡ると、絵本の店や沖縄のお店がありそのお店で沖縄のイスタントラーメンをふたつ土産用に買った。
川が地中に入るところから上に出ると駅へ向かう道であった。駅のコンコースを抜け、南口に出て左手の道へ入った。賑やかな通りを抜け、大きな交差点に出たが、その先は暗かったので、道を左に行き駅方面へと引き返そうと再度左に折れた。
その通りには何軒かの呑み屋が集まっていた。しばらく行くと青いネオンサインが見え、そこが「消極的に」探していた「ブルームーン」であった。
店に入るとカウンターだけの店で、ボーカルが静かに流れていた。妙齢の女性がひとりでやっていて、先客が二人いて静かに呑んでいた。
私はカウンターに座り、バーボンを頼んだ。店を見渡すと、マッキントッシュのプリアンプとメインアンプにJBLのモニターという装置だった。
また、ボーカルのライブの予定が貼ってあったり、ポスターがあったりして、若いボーカリストを育てているという雰囲気が伝わってきた。
バーボンが私の前に置かれてから、かかっていた音源(CD)がかわった。するとその女性がそのジャケットを私の前に置いてこう言った。
「今これをかけました」
それはCDの紙ジャケットで、ジョニー・ホッジスのオーケストラのものだった。
最近のジャズの店は本当に親切だ、それは嬉しくもあり悲しくもある。
バーボンが終わるとジントニックをお願いした。CDはビル・エバンスのアット・ロニーストッツのライヴで、マーク・ジョンソンのベースがとてもいいものだ。
店の女性が少し出てくるから待っていてくれ、と私に言い外に出て行った。ちょっと不思議な出来事にぼんやりしていると、その女性が戻ってきた。そして私のジントニックを作り直した。
丁寧な出逢いは時として重くなることがある。私は何度も礼を言いその店を後にした。
三鷹の駅に向かう途中に「1954」というバーがあった。カンバンはゴジラである。1954年というとゴジラが生まれた年でもある。ふらふらとその店に入った。中におおきなゴジラがあった。


