劇団セルビシエ´大人公演第一弾『花灯す夢』―クラス演劇の先に見えるもの | leraのブログ

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劇団セルビシエ´大人公演第一弾『花灯す夢』

―クラス演劇の先に見えるもの

 都立高校の文化祭でクラス演劇が有名な高校に青山高校と日比谷高校がある。それは全クラスが演劇をやり、演劇祭の様相を呈する。さらに多くの観客を集めることでも知られている。

 先輩の演劇を観ることにより、そして準備期間を長くは1年とれるため、レベルはけして低くない。作詞作曲演奏のミュージカルがあれば、近松門左衛門やシェークスピアの作品もある。

 また、著作権問題で青山高校PTAと日比谷高校PTAが協議を持ったことがあり、それはNHKの特集で放送もされた。

 私などは、クラスという単位でひとつの演劇を作り上げることに意味を見出す。

そこには表現に関する、あるいは表現をまとめることに関しての知見が蓄積されるからだ。

その青山高校のクラス演劇のメンバーが中心になって作った劇団が「セルビシエ」「セルビシエ´(ダッシュ)」である。複数の世代にわたっているし、スタッフやヘルパーには大学や職場に散った友人たちが集い、日比谷高校の出身者もいるという理想的な演劇集団になっている。すでに2007年から6回の公演を重ね、今回は7回目となる。

演劇において「アマチュア」の定義は難しいが、「アマチュア」の持つ意味はけして小さくない。(「アマチュア」演劇の面白さを下卑た言い方をすると「紐付き」ではないからだろう)

前回(2009年公演)ではチケットが買えず見られなかったが、今回も2日間の公演でやはり事前にチケットは完売した。そのためか初日初回の前に公開ゲネプロを行ったと言う。

装置はホリゾントのかわりに長い紙が下げられた。ちょっと見たことの無い厚手の紙。上手は仕立て屋を表現し、下手はランタン屋を表現している、作り込んだ舞台。

くじびきでキャストが選ばれ、場内注意と「おもしろい話」をする。この時点で舞台と客席が共同作業をすることが分かる。

舞台が始まるとピアノ一台の伴奏でユニゾンの生歌である。生歌は映える。歌に関しては他に二重唱があったり、バックコーラスになったり、と効果的に使われた。歌詞も十分伝わり練度を感じる。

テーマは、人は生きるうえで笑いを身に着け、それが「笑い屋」となり自分を失っていく。

自分というものを獲得できない私にとっては笑いの陰惨さが眼前にあった。自分が本当に笑う時、それは「独り」なのだ。これを笑いというかどうかは分らない。人が人前で笑うのは、関係性の形成に他ならない。だから笑いはパーソナルでもあり、また対外的行為なのだ。

舞台はその笑いを巡って自己獲得に奔走する。自己獲得が可能かという前提は示されない。

連作の趣があり、それは笑いを誘うくすぐりと、観客の反応からわかる。演劇を「記憶の連鎖」とした場合の構成だろう。やや甘いエピローグも、観客へのプレゼントかもしれない。

それは、ホリゾントであった大きな紙に幻燈が写され、その温かさに象徴されている。そこには等身大の希望と、潰えてしまったのかもしれない夢の名残りがあったのかもしれない。

2013.3.9-10 APOCシアター

脚本・演出:和田幸子

音楽:橋本かおる

照明:佐藤翔太、照明操作:あんとん

音響:岡野枝里子

舞台美術:渡會展之、松永彰子

宣伝美術・ヘアメイク:小中澤文

衣装:高橋里奈

製作:崎山裕子、松本鮎子、田中明日香

後援:坂東みさき、千葉理恵子、中澤弘子