40年ほどコーヒーを飲んできて、店がかわってしまったり(神保町ミロンガ)、豆がかわってしまったり(神保町ラドリオ)、店じまいしてしまったり(三崎町エリカ)で、かつての香りと味を求めてずい分時間が経つ。(ミロンガとラドリオはかつて経営母体が一緒だったのでコーヒー豆も同じものを使っていたが、エリカに関しては偶然なのだろうか?とにかくこの三店は味がとても似ていた)
その行脚の中で、一度は行かなければならない店がカフェバッハだった。
東京のコーヒー店としては有名であり、オーナーも業界の有名人であるのだが、場所が日本堤のためなかなか行けなかった。東京に長く住んでいる人でも日本堤と聞いてすぐ場所を頭に思い浮かべられる人は半分もいないだろう。
3月3日に京橋の東京国立近代美術館フィルムセンターで映画を観た帰りに意を決して行った。
回向院で直侍と鼠小僧の墓を見て、圓通寺で処刑された人々の魂を弔い、遊女の投げ込み寺だった浄閑寺は今回は見送って、だいたいの見当をつけて行ってみると、なんと大林(酒場)の少し先にあった。
まず驚いたのは満席で待っている人が3人居て、さらに待つ人用のイスがあったことだ。けして大きい店ではない、30人も入ればいっぱいだ。少し待って座ったものの、後から後から客が来る。
コーヒーは店名を冠したバッハブレンドをオーダーした。残念ながら私が求めている濃厚で香りが高く酸味の強いタイプではなかったが、たいへん上質で上品なコーヒーだった。カップも名入りで、少し飲んでいくと内側にバッハのサインが見えるというステキなもの。イスも木彫で店名が彫られており、壁の版画も趣味が良い。BGMはもちろんバッハ。
あるオーダーではプレーンソーダがつき、六本木のカフェルポールを思い出した。(私はこの店で女性と待ち合わせ4時間待ったことがある)
ひとつの特徴はどんどんケーキが減っていく。新たな客がケーキは?と尋ねると「これから出来てきます」という返答をしていた。ケーキも人気なのかもしれないし、豆だけを買いに来る客も後を絶たない。スタッフもみんな好印象で、噂どおりの名店であった。
2杯目は酸味の強いものをと尋ねるとグアテマラのストレートを勧められた。確かに酸味は感じたがとても上品な酸味とコクで、私が求めているものとは違っていた。ここに来て私が求めているものは洗練されていないコーヒーだったのかと思った。
場所は日本堤である。大林でどぜう汁で一杯呑み、丸千葉でアンコウ鍋を食べた。
今後このルートが常態化しないことをこいねがう。
尚、正式名称は「自家焙煎珈琲屋バッハ」らしい。
