ヌーベルヴァーグを私は定義できない。世間では定義化されている。しかし、ヌーベルヴァーグとカテゴライズされるほど特徴がある。ただそれを言語化できないだけの話しだ。ただ私の場合はジャン・リュック・ゴダールのことだけを言っている気がする。
『ダークホース』を観て、そのヌーベルヴァーグを思った。特にカメラ(ギョーカイ用語でキャメラ)定点を設けない視点。しかし最もヌーベルヴァーグ「的」だと思ったのは女性の祖母が死んだこと。その描き方である。正しくヌーベルヴァーグだった。
上映後の監督のインタビューで「ヌーベルヴァーグのオマージュとした作った」とあり、激しく納得した。
ヌーベルヴァーグ体験は人それぞれだが、監督と私の体験は近かったのかもしれない。変な言い方をすると「カワイイ映画」。ヌーベルヴァーグの要素はあるし、モノクロだし、ストーリーはヌーベルヴァーグだし。
監督がいみじくも一言で言いえていた。「スタイリッシュだけど無頓着」
だいたいタイトルからしてヌーベルヴァーグだ。
デンマーク語の英訳タイトルが気に入らず、自身が英語圏に留学中に自己紹介すると「ダーグル」を「ダークホース?」ときかれたからだと言う。
テーマは「恋におちること」である。象のシーンは実に巧みである。ヌーベルヴァーグ的「恋のおち方」を伝統的に踏襲している。(ここは基本的に米映画、日本映画と違うところ)監督は「スピーディーなロックンロール的なドグマ映画をつくりたかった」と言う。それには成功している。
低予算映画でも1シーンにお金をかけると、全体がリッチに見えると笑いながら言っていて、それが象のシーンである。また1シーンが他より「大きく」なることにより全体がダイナミックになるとも言っていて、観客は監督の妖術に翻弄される快感がある。
尚、撮影はコペンハーゲンでされた。監督はアイスランド籍。
2005年デンマーク・アイスランド映画、デンマーク語、106分。
監督:ダーグル・カウリ Dagur Kári
原題:Voksne Mennesker/Dark Horse
2005年アイスランドアカデミー・エッダ賞受賞
備考:Voksne Menneskerは「大人の人」といった意味か?
