山田一雄、生誕100年
山田一雄の業績のひとつにマーラーの日本への紹介があるが、まだ数々のものがある。初演が多いこともそうだし、作曲もしかりである。
2012年9月9日みなとみらいホールで「生誕100年、山田一雄メモリアル・コンサート」が開かれた。
その中で彼の作品が演奏された。
「序曲 荘厳なる祭典」「歌曲 もう直き春になるだろう」「歌曲 日本の歌」である。歌は娘でもある山田英津子(ソプラノ)。
「序曲 荘厳なる祭典」は1939年の作品で皇紀2600年を記念して作られた作品。世界初演ということだった。
管で静かに始まり、「君が代」のモチーフと童謡のモチーフが提示される。やや明るさを保とうとする管と、不安な空気を作る弦とのコンビネーションが不思議な空間を作る。勇ましさや騎行を連想させるところもあるが、すぐに不安な弦に打ち消される。
なかなか奥の深い展開。
「日本の歌」は深尾須磨子の詩に曲をつけたもの。1944年の作品である。雅楽を思わせる打楽器で始まる。
詩は「うまし国、日のもと」「大和心、勢(きほ)ひたちつつ」という詩句があり、ラストの「天地(あめつち)のむた、栄えゆく国」でピークを迎えるが、勇ましさは全く無い。切なさと不安がいり交った空気だった。
ラストは彼が初演で指揮したショスターコヴィッチの5番。ショスターコヴィッチの現代性を問うより、山田一雄を偲ぶ演奏となった。
山田一雄は1944年に応召され通信兵としてソウルへ行き、ガダルカナル移動の途中で日本に戻された経験がある。
ショスターコヴィッチはスターリンとの関係(亀山郁夫『悲劇のロシア』が詳しい)国家と表現を巡る葛藤があった。
歴史的な意味で、なかなか複雑なコンサートだった。
指揮:小泉和裕、神奈川フィルハーモニー管弦楽団