映画でビール!
太平洋戦争時東京は度重なる空襲(現在の言い方だと空爆)を受けた。
銀座でその被害に遭わなかったのは(当時の言い方だと「焼け残ったのは」)服部時計店とライオンである。ライオンは食券食堂になったし、服部時計店は戦後進駐軍のPXになった。
神保町シアターで「映画をもっとおいしく!ビールを飲んでビール映画を観よう!」というイベントをやっている。
これは、マキノ正博(まさひろに関しては色々な字があるがここでは正博)監督が1934年に撮った映画作品が最近見つかり、その上映会をかねたイベントである。題名は「泡立つ青春」で、大日本麦酒がビールの宣伝用に造った51分の映画作品である。
そして、映画の観客全員にエビスビールとおつまみが配られる。料金はそれを含めても500円である。
まず浴衣姿の女性が出てきて司会をする。
次に支配人が出てきて、乾杯の音頭をとる。
そして映画上映となる。
最初のシーンは都市対抗の野球。
勝ったチームを応援していた人と、負けたチームを応援していた人が友人同士で、ゲーム終了後銀座へ行こう、ということになる。タクシーの運転手が「1円、2円で行きます」と声をかける。まさしく円タク。
なぜ銀座ライオンの話をしたかと言うと、当時のライオンの1階で撮影されている。無論現在とほとんど同じだ。ホール中央にいて、専属歌手が「泡立つ青春」という歌を歌う。その歌に合わせて満席の客がジョッキを高く掲げるさまは実に微笑ましい。
また、ビールを注ぐ人(ライオンではビールを注ぐ人は職人として尊重されている)やメイドの服を着たウェイトレスがその歌に合わせて踊るのである。
次に二人はどちらかの家に行きまたビールを飲み続ける。
また子どもに答える形でビールの製法を説明する。
友人が訪ねてきて、「恋」のエピソードもある。
「今日神楽坂の芸者がビールの歌を歌う」と言って、ラジオのスイッチを入れる。
するとシーンは新宿御苑のような公園(「映画渡世」によるとビール会社の社長宅とのこと)へと変わり、振袖を着た芸者(振袖だから半玉かもしれない)が大勢出てきて、「ビールよいもの」という歌に合わせて群舞するのである。
再度は彼女たちがオワリの人文字を作る。
この作品に関してはマキノの自叙伝的作品「映画渡世」にも多くをさいている。(角川文庫だと264ページから)
お金のなかったマキノが花澤というキャメラマンとライオンに飲みに行ったときに、大日本ビールの宣伝部の人から映画製作を頼まれたのだと言う。
なかなか楽しい映画で、ビールを飲みながら観ている観客は笑ったり、手をたたいたりしている。
1934年というと、前年に国際連盟を脱退している。そして満州国が帝政を実施した都市である。
サービスのビールはビールメーカーからのものではなく、神保町シアターの出血サービスだった。このイベントは全3回のみで、最後の1回は9月10日21時から。確かに貴重な体験だった。