「オッペンハイマー」は、クリストファー・ノーラン監督と、撮影監督のホイテ・ヴァン・ホイテマの4度目の作品となる。
「インターステラ」「ダンケルク」「TENET テネット」など、二人は、ヒット作を飛ばしている。
その撮影監督のホイテマは、「オッペンハイマーは、心理スリラーに近く、キャラクターの表情が大きく左右する」と述べている。
まさに、天才科学者のオッペンハイマーは、英雄とも悪魔とも呼ばれ、栄光と没落の波瀾万丈の人生を歩む。
彼が創った「原子爆弾」は、その後の世界の在り方を変えた。
いま、自分たちは、その世界の中にある。
人類の関心は、彼の初動機…心情がどう動いていったのかに向くのは当然のことであろう。
この映画が、昨年夏の封切りから、世界興収10億ドルという途轍もないヒットとなっているのだ。
被爆国の歴史を持つ自分としては、この映画を観る前は、「原子爆弾」へのアレルギーというか抵抗があり、積極的に観たいという気持ちが起きなかった。
しかし、一方では、「誰が、何故、この悪魔の兵器を作ろうとしたのだろう?」という気持ちがあった。
高校、大学と、その辺の歴史は知識としては学んではいたが、その情景や時代的な匂いは、やはり映画によって再現されると思った。
案の定、超天才のアインシュタインとオッペンハイマーの交す言葉など、とても印象的なシーンとして残ったのである。
主演のキリアン・マーフィーの演技力は素晴らしく、顔の表情が、その時々の社会を写していたような気がした。
映画後半で、「原子爆弾を創った人間」が、その後のアメリカでの権力闘争や政争の具になっていく。
クリストファー・ノーラン監督は、ロジカル・論理的な組み立てをしっかりされる一方で、後半は、観客の心に、当事者達の溢れる情緒や感情を、迫力満点で迫って来る手法を取られると思う。
まさに、これまでのヒット作を凌ぐ演出は、素晴らしかった。
今、人類は、ターニングポイントに立っている様な気がする。
是非、「オッペンハイマー」を観てほしい。
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