「哀れなるものたち」
原題は、POOR THINGS
あっという間の142分だった。
衝撃的であり圧倒的なストーリーと、主人公のベラを演じるエマ・ストーンの魔法のような驚きの進化が、スクリーンから目が離せず、観ている者の心臓を鷲掴みにする。
「哀れなるものたち」は、不条理な世界観を独自のスタイルで切り取る、ヨルゴス・ランティモス監督作品。
原作は、スコットランドの作家である、アラスター・グレイ。
ヴェネツィア国際映画祭で、金獅子賞を受賞し、アカデミー賞では、作品賞・監督賞・主演女優賞など、11部門にノミネートされている。
束縛や支配、所有や偏見が蔓延する社会と抗いながら、真の自由と平等を見つけていく、主人公ベラの成長の物語である。
その進化の過程の中での、人生を覗き込む様なカメラのレンズの視点の表現は、驚きしかなかった。
また、最初は、主人公が、タイトルのように、可哀想で哀れなるものだと思っていたが、映画が進むに連れて、主人公に群がる男たちが可哀想で哀れなるものたちに感じてしまう。
喜怒哀楽を無垢のままに発する主人公に対して、異様で異常の怖さを感じてしまうが、実は、それが赤裸々な人間の持つ本質だと、映画が進むに連れて気づいていく。
愛と憎、支配と解放、独占と平等などの、2極対立的な両価性(アンビバレンス)も見事に描かれており、清水崇監督もパンフレットに寄稿していたが「観ている者を正気に目覚めさせる映画」と話されていた。
「女王陛下のお気に入り」や「ラ・ラ・ランド」とは、まったく違う役を、圧倒的な存在感で熱演したエマ・ストーン。
あの役を熟せる役者が、他にいるだろうか。
映画好きの方は、是非、観て欲しい!
映画の存在意義を感じさせてくれる映画である。
ムービーオンで、絶賛上映中!