人生を豊かにする糧は、多くの「映画」との出会いであると確信している。


映画の中のそれぞれの物語や人間模様が、時と空間を超えて感じられる。


「本」との出会いも素晴らしいが、一人の作家が書く本よりも、監督、脚本、美術、演出、出演者、音楽などの、多くの才能が集結する映画は、より心に沁み入るのである。


昨年(2023年)に、ムービーオンで観た映画は、91本であった。

自宅で、DVDで観た映画が5本なので、合計で96本となる。


当然、山形国際ムービーフェスティバルへの応募作品は除いてのこと。


あくまで、自分から観たいと思って、自分史に加えた映画だけである。


でも、昨年より、10本くらい少ないかも…。

コロナ禍が明け、夜の会食が増えたのも原因かもしれない。


しかし、一年を振り返ると、映画がそばにある人生ほど、幸福なことはないと改めて思う。




年が明け、今年(2024年)初めて観た映画は、役所広司さん主演の「PERFECT DAYS」である。


この映画は、格別であり、観た後に「素晴らしい!」と思わず声が出た。


第76回カンヌ国際映画祭最優秀男優賞受賞作品であり、第96回米国アカデミー賞国際長編映画賞日本代表にも選ばれている。


国内外から絶賛されている理由は、たぶん観ないと理解できない世界が、この映画の中にある。




ドイツの名匠ヴィム・ヴェンダースと、日本を代表する俳優役所広司の美しきセッション。


東京都渋谷区のトイレをリノベーションし、今までの公衆トイレのイメージを刷新するプロジェクトから生まれたストーリー。


渋谷区の公衆トイレの清掃員の平山(役所広司)は、古いアパートで一人暮らし。


朝起きて、花に水をやり、仕事に出る。

夜は本を少し読み、寝る。

そんな、平山の当たり前の1日が描かれる。




しかし、平山にとっては、繰り返しではないのだ。

いつも、すべてが新しい。


季節、風の音、光と影、木漏れ日、呼吸…。




このプロジェクトの企画、プロデュースを担当したのは、柳井康治氏。

ファーストリテイリングの創業者の息子である。


彼は父との会話の中で、東京オリンピックの際、公共トイレを「おもてなし」の新たな価値創出の場として考えたそうである。


同時に、掃除やメンテナンスの重要性に気がついたという。




映画にも登場するリノベーションされた東京渋谷区のトイレは17ヶ所。


隈研吾、槇文彦、安藤忠雄、伊東豊雄、坂茂、片山正通など、世界的な建築家達が手がけた傑作揃いである。


The Tokyo Toilet …頭文字をとって、TTTと呼ばれる。




役所広司さんが山形入りされたのは、2010年の山形で撮影された「13人の刺客」の公開キャンペーンの時であった。


穏やかで、礼儀正しく、あっという間にその魅力に惹かれていく。


当時、ご無理を言った。

役所広司さんがデビューした織田信長役が大好きで、自分を木下藤吉郎と思って怒って欲しいとお願いする。

「こら!サル!…励めよ!」と小芝居をしてくださったのだ。


それを聞いてくださった役所広司さん。

感謝しかなかった。




この映画「PERFECT  DAYS」は、人生の儚さと、人生の素晴らしさを感じた。


儚いからこそ素晴らしい。


もし、今の生活から離れたら、あのアパートで静かに暮らすのも素敵だなぁと、感じたのである。


なんと言っても、役所広司さんの演技の素晴らしさは必見である。




尚、役所広司さん演じる平山が、映画の中で読んでいる本はコレ。


是非、読んでみたいと思う。



映画「PERFECT DAYS」

ムービーオンにて上映中!

観ないと損をすると思ってしまう、絶対お薦めの映画である。