「糸」「64-ロクヨン-」「ヘヴンズストーリー」「菊とギロチン」「護られなかった者たちへ」「感染列島」「アントキノイノチ」など、多様な映画を撮り続けてきた鬼才・瀬々敬久監督。


一昨年の秋、山形国際ムービーフェスティバルを開催する際に瀬々監督に電話をしたら、「今年は行けそうもない、岡山で“とんび”を撮っている」とのこと。


「リメイクかな?」と思ったと同時に、瀬々監督の「とんび」を観てみたいと、その時から心待ちにしていたのである。




期待通り、いや、それ以上の瀬々監督の「とんび」であった。


これまでも、何度かテレビでドラマ化された重松清さんの作品であるが、この原作のエッセンスを凝縮させた、感動の映画となっている。


瀬々監督は、自分と同じ1960年生まれ。

同年代だから価値観が似ているのか、最初から、すぐ仲良くなった。


重松清さんは、1963年生まれ。

主人公のヤスの息子のアキラ(旭)は、1962年生まれという設定である。


だから、出てくる風景も、時代の空気感も、自分たち世代にはドンピシャであり、自分たちの家族や親戚、仲間たちの人生と重なるのだ。




突然の悲しみや災難に遭った時、それを支え助ける仲間たちがいる。


そんな人情が、日本中に溢れていた。




映画では、突然の事故で、妻を亡くし男手一つで息子を育てる父親と、父親と葛藤しながら、愛情の意味を知っていく息子の繋がりが綴られていく。




時は流れて、息子のアキラが、妻をめとり、子どもを授かる歳となる。


いつの世も変わることのない親子の絆と、父と息子の50年を超える人生を描いた家族の物語である。


そして、テレビドラマでは描かれていない、父ヤスが亡くなるまでの一生をアキラは見届けるという、映画オリジナルとなっているのだ。




日本一不器用な父親を、阿部寛が演じる。

そして、皆の温かい手で育てられた息子を、北村匠海が熱演する。




この映画でもう一つ感じたことは、瀬戸内海の美しい海と、町の人々の熱量である。


東北地方、そして山形の人には新鮮だと思う。




令和の時代も、色褪せない物語。

1人の男が、何を守り、何を大切に生きたのか?

是非、映画館でご覧ください。


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