2020年の1月25日、60歳の誕生日を迎えた。

還暦である。

行政の管理職や、学校の校長等の同級生も多く、ここ1、2年は、「退職」や「第二の人生」などとの話題をよく聞いた。

そんなこともあり、経営者にとっては60代は腕の見せどころのはずが、どこか寂寥感を持ちながら、今年を迎えていた。



20代は、時間は永遠にあり、自分が世界の中心のように思えていた。
一方で、自分が「何者であるか、どこに向かっているのか」という漠然とした不安が足下には広がっていた。

30代は、走り出した「ケーブルテレビ山形」の設立と、新しいメディアの模索に24時間かけていたと言っても過言ではない。

40代は、ムービーオンの設立、山形国際ムービーフェスティバルの開催など、テレビメディアに止まらず、「文章・映像・音楽・演出」を合わせた総合芸術の「映画の世界」へ入り込んでいく。

50代は、初めてとなる学校経営、さらには、パスラボやモンテディオなどのプロスポーツの民間での経営の難しさを経験する。

人生80年とすると、20年ごとに「起承転結」
最後の60歳からの20年は「結」に当たる。

84歳になる母は、「60代は、味わいがある年代」と言うが、どんな世界なのかは、皆目見当がつかない。

良い事ばかりではなく、悪い事もあると言う事なのか…。
きっと、人生の光と影を、より感じる時期なのかもしれないと推察する。



今年1月に、自分たちが小さい頃から、身近な「特別な場所」であった、大沼デパートが倒産した。

子供の頃は、クリスマスや誕生日には、必ずと言っていいほどプレゼントを買ってもらった場所。

今では、スーツは大沼デパートでしか作らない…と、とても大切な場所であった。


そして、その翌月、山形県内の経済界を揺るがした談合事件。

この2つの出来事は、関係者に知ってる方々もいた為に、心の中に重くのしかかっていた。



3月になると、本格的な新型コロナウイルス感染症の全国への拡大。

それにより、様々な世の中の流れが停滞し始める。
心も止まった感じがした。

プロバスケットボールBリーグの残り試合が、無観客試合となり、その後シーズンが途中で終了となる。



4月24日からは、国の非常事態宣言に続き、山形県の営業自粛要請によるムービーオンやまがたの休館。



吉村美栄子知事、佐藤孝弘山形市長、山本信治天童市長への、県内全映画館の事業継続支援の要望書の提出。

未曾有の状況に、山形県興行生活衛生同業組合として、要望を聞いてもらい御礼申し上げる。



山形県の吉村美栄子知事や職員の皆さんが、休みもなく夜中まで新型コロナウイルス対策の為に、命がけで戦っている姿には頭が下がる。

さらには、ギリギリで、山形県の商工業振興資金を、5千万円、1億円と借入をして、全てをかけて経営に当たっている友人達にも頭が下がる。

大変な状況なのに、一生懸命、会社を支えている社員やスタッフにも感謝しかない。

そんな姿を見るにつれ、今、頑張らなくていつ頑張るのか…そんな、思いを強くする。


ムービーオンも、パスラボも、数億円を借り入れしながら、何とか経営基盤を守り、みんなで乗り越えようとしている。

守るべきものを、守る為に全力を尽くすのみである。



こういう状況だからこそ、励まし合いたいものである。

支え合って、スクラムを組んでいくことが、とても大切であると思う。


最近、Facebook、SNSなどで、誰かを攻撃したり、誹謗中傷したりする投稿を目にした。
あまり、良い気持ちにならない。
知っている方の投稿だと、尚更である。

自分も含めて、人は聖人君子ではなく、怒りが沸く時がある。

でも、このコロナの状況では、みんなが大変でギリギリだからこそ、「攻撃」ではなく「励まし」を心がけたいと感じている。

「究極の場に立った時、その人間の真価が問われる」と古来から言われるように、「攻め合う気持ち」ではなく「支え合う気持ち」を持ちたいものである。

「攻めたら」必ず「攻め返される」のが世の常。
「支えたら」必ず「支えられる」のだ。


新型コロナウイルスに、最も侵されやすいのは、人の心かもしれない。

心までは、負けたくないのである。