本年度のアカデミー賞で、最優秀作品賞を受賞した映画「グリーンブック」。

真実の物語である。


その他にも、ゴールデン・グローブ賞や多くの映画祭で、80受賞43ノミネート(2月現在)され、今、世界中から最も注目されている映画である。



この映画のタイトルとなった「グリーンブック」とは、1936年から1966年まで、ヴィクター・H・グリーンによって、毎年作成・出版されていた、黒人旅行者を対象としたガイドブック。

黒人が利用できる宿や店、黒人の日没後の外出を禁止している「サンダウン・タウン」などの情報がまとめてあり、彼らが差別、暴力、逮捕を避けるために、欠かせないツールだった。

特にアメリカ南部では、黒人が一般公共施設の利用を制限する「ジム・クロウ法」があり、郡や州により、適用範囲が違っていたので、車で南部をめぐる時は、必須アイテムだった。



時代は1962年、ジョンFケネディ大統領が、「戦争ではなく平和を」「差別や偏見ではなく自由と平等を」を訴え、国民に対して「国家が何をしてくれるのかを問うのではなく、自分たちが何ができるのかを問う」と演説した頃の話。

ニューヨークのナイトクラブで働いていたが、改装の為に2ヶ月間閉店となる。
その間、トニーはある黒人のピアニストからコンサートツアーの運転手として雇われる。



腕っぷしが強く、ボディーガードとしても頼りにされていたトニー。

黒人のピアニストの名前は、ドクター・ドナルド・シャーリー。
巨匠のストラヴィンスキーから、「神の域の技巧」と絶賛され、ケネディ大統領の為にホワイトハウスでも演奏する育ちが良さそうなインテリの黒人の男性であった。



そのシャリーは、なぜか黒人差別が色濃く残る危険なアメリカ南部をコンサートでまわることを決めていた。

2人は「グリーンブック」を頼りにツアーへと出発する。



差別や偏見、そして暴力や逮捕。

そこで2人の心に宿る思い…。



アメリカの専門メディアは…今年最高の一本。映画が終わらないで欲しいと思うほど素晴らしかった。
…生涯の一本となった。
…2人の最高のバディ映画。最高のドラマ。
など、多くの熱いコメントが並ぶ。



映画を観終わった時、自分もスタッフ数人も、言葉が出なかった。

心に伝わってくるメッセージの大きさ。
いつの間にか、主人公の2人のファンになっている自分がいた。

トニー・リップには、「はじまりへの旅」「イースタン・プロミス」のヴィゴ・モーテンセン。

ドクター・シャーリーには、「ムーンライト」「アリータ」のマハーシャラ・アリ。



ムービーオンを出た時、まるでニューヨークのクリスマスのような雪が降っていた。