その時間と空間は、とても輝いていた。


山形県立上山高等養護学校の先生方、PTAの皆さん、山形労働局職業対策課の皆さんが、「場」を作られて、上山高等養護学校の先輩達の就労経験である「働く」という生の声を、現役生徒たちが真剣に聴いていた。

その「働きたい」は、「生きていく」ことに同化していく。
その人間としての本質的なテーマに、こんなにも真剣に取り組んでいられる「場」に、ムービーオンの辻くんと共に、感動と敬意を持って臨んだのである。



山形県立上山高等養護学校の2年生の時、辻くんは大宮先生とご一緒に、ムービーオンやまがたにて、掃除などの実習に、産業現場における実習として、前期10日間、後期10日間の体験をされた。

中学校や高校の職場体験実習は、ムービーオン、ダイバーシティメディアなどで、これまでも何度も受け入れていたが、そこから就職まで繋がることはまず無い。

辻くんもそうだろうと思っていたが、翌年の3年生の時も、前期10日間、後期10日間の体験実習をされた。

その後、ムービーオンやまがたで働きたいとの話から、忙しい土曜日や繁忙期のトレーニングを積み、就職に対する心構えを育成するということだった。

それまでの累計で約50日間の実習での辻くんは、笑顔を絶やさず、真摯に人が嫌がる仕事でもしっかり取り組み、周囲の社員に感動すら与えていた。

平成23年春、自分は辻くんのお母さんと大宮先生へ対し、「これからの辻くんの人生は、ウチの会社のメンバーとして、請け負わせていただきます。」と、就職を認めたのである。



自分が、小学校、中学校、高校のPTA会長をしていた時によく話していたことは、「親は子どもの完成した姿を見ることはできない。どうしても先になくなる場合がほとんどだ。だから自分がいなくなった時の事がとても心配である。だから思いや願いの種を植えましょう。」

それだけに地域や社会との関わりが大切となる。
家族のように、共に生きる覚悟が必要なのであると思うのだ。

その考えに、影響を与えてくださったのは、当時のスペシャルオリンピックス日本の細川佳代子会長と、三井嬉子理事長であった。

インクルージョン…包摂。
当時自分は、何十回も話をさせてもらい、時間を共にし、そんな社会の構築を呼び掛けられた。



9月28日(金)、山形県立上山高等養護学校PTA研修会の「就労支援セミナー」が開催された。

現役の生徒、PTA、採用企業の担当者の方々へ対して、『「生徒の働きたい」を育てるために』をテーマに、シンポジウムが開催された。

スタートは、輝くような現役生徒たちの心のこもった歌。
素晴らしかった。



進行は進路指導主事の渡邊千佳子先生。

シンポジストは、東北アヲハタの卒業生の笹原康平くんと、事務マネージャーの佐藤裕士さん。
そして、ヤマザワ北店の卒業生の矢口健太くん。



辻くんも、自分の経験を話していた。

現役の生徒たちの真剣な表情、先輩達の経験を必死に聴く姿が感動を覚えた。

また、自分からも雇用者として、多くの話しをさせてもらった。



辻くんを含めて、卒業生達は、「笑顔で、まじめに、挨拶もしっかり!」と、社会の基本を話していた。



ダイバーシティメディアのカメラ、ムービーオンからは笹原副社長と高橋常務、ダイバーシティメディアの桜井秘書室長が参加していた。


現役の生徒からの質問にも、しっかり答えていた先輩達。

彼らがお手本になり、多くの障害があっても無くても、その人間の可能性を育てて、会社の一員として、チカラを発揮して輝ける社会を築けたらいいと思う。

ちなみに、辻くんは、入社6年後、正社員となり、現在は接客サービスもしている。


可能性は、本人だけでは伸ばせない。
周囲も、その環境を作っていく事が、最も大切であるのだ。