「伊豆の踊子」考 | 停車場遍路の鉄道雑記帳(副)

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「伊豆の踊子」は私が原作を読んだことがある数少ない小説のひとつである。比較的短編なのでTVドラマ化の際に時代背景などを考慮して原作にないエピソードが加えられていることがある。記憶に残る2つを紹介する。

まず一つは、下田で踊子の兄夫婦が学生に「妾でもいいから妹を傍に置いてやってくれ」と頼むシーンである。大正時代、高校(今で言う大学、学生は川端自身だから明記されてはいないが一高(=東大)生である)に通える学生は富裕層で、旅芸人はその対極にあることが伝えたかったのだろう。ドラマを見た後に原作を読んだらこのシーンが出てこないのでそれとわかった。

もう一つは、湯ヶ島で踊子が姉のように慕う娘に会いに行くシーンである。この娘の設定は川端の別の小説から持ってきている(再確認してないので勘違いかもしれない)。彼女は湯女であり踊子の将来を暗示している。こちらに関しては、踊子が髪型のせいで実年齢より高く見えるので、学生の思いとして「踊子の今宵が汚れるのだろうか」と原作にある。

いずれも踊子の身の上に関する描写なのだが、小説として発表当時はこのような追加説明が無くともわかったのだろう。その上で学生の心情を慮ろうとしてみるのだが、まだ何か足らないのかすっきりしないのが正直なところである。