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鎌倉時代後期


所在地;福岡県福津市大字勝浦字新原3783 双山(ぬやま)


玄武岩製





塔高; 93.0センチ


基部幅(最大幅);38.0


基部厚;20.5 最大厚;22.0





 自然石塔婆群中右から4番目の自然石塔婆板碑。碑正面上部に、梵字「アルクシュブルユー」字の輪郭だけを線刻する。梵字の切継のうち「r」があるかどうか明確に判断できない。ない場合は、「アルクシュブユー」となるが、のちに紹介する大乗院の(1)にも同字があり、これには明瞭に「r」が読み取れるので、ここでも一応、上記の読みを選択しておくことにする。その下、碑の中央に月輪内、子持ち蓮弁の蓮台上に文殊と思われる菩薩坐像を線刻する。


 梵字「アロキシャビリヤ」は、悉曇(シッダン)の中で切継(合字)の最も多い文字で、音はあっても語句にならず、意味はないとされる。したがって、仏尊の種子にはならない筈である。しかし、ここで「アロキシャビリヤ」に母音の「ウー」を加えた「アルクシュブルユー」とした百塔のこの梵字が単なる文字では、一字を抜き出してここに命点を加えて配置する意味は無いともいえるので、何らかの根拠があって、表現されたものと考えざるを得ない。推測の域を出ないが、梵字の中で最も難解とされるその一字をもって、この塔に限っては、知恵第一とされる文殊菩薩に当て(文殊菩薩の種子という意味ではなく)文殊菩薩像の上部に配されたものとは考えられないだろうか。


 像は、右手に剣、左手に梵篋(ぼんきょう)と思われる箱状のものを持っているので、文殊菩薩と考え


られる。像の下に法名はないが、梵字と図像の配置、大きさ、梵字の書体、仏像や蓮台の表現は、(1)、(2)と同様で、第3群に属するもので、同時期に造立されたことがわかる。


 なお、梵字「アルクシュブリユー」と摩多(母音文字・韻字・12点のこと)は変わっているが「アリキシビリイク」一字を信仰の対象として表現した自然石塔婆(未見)が岩手県川崎村にもある。貞治5年(1366)の造立である。この「重体至極文字」とされる梵字を信仰の対象とした遺品は、いまのところこの3例が知られるのみである。





1984.10.01調査





参考文献;『九州の石塔上巻』(多田隈豊秋著 西日本文化協会 S.50.08.01.)


     『太宰管内誌』


     『仏像図典』(佐和隆研編 吉川弘文館 S.37.02.01.)


     『種子抄 曼荼羅附表(一)』(望月友善編)


     『昭和56年第三回梵字教室テキスト』(梵字資料研究所、S.56.07.04-5.)


     『川崎村「重体至極梵字(じゅうたいしごくぼんじ)」要記』















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