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1527.03.吉日  大永□三月吉日


熊本県上益城郡山都町大字高辻字早楢 阿弥陀堂境内


凝灰岩





阿蘇南郷の高森から、高森峠を越えて、蘇陽町に入る。阿蘇外輪上の国道325号から外れ、東竹原からニ瀬本へ抜けるバス道沿いに早楢(ワサナラ)の集落がある。バス停から裏手に入る旧道を20メートル程降った左手に、杉林を背にして、一区画が設けられ、通称「アミダさん」と呼ばれている小堂が建っている。堂内には、近世以降と思われる木彫阿弥陀三尊立像が安置されている。


堂の背後、杉の大樹の根元に立てかけられたように一基の自然石板碑が置かれ、周辺には小石塔の残欠が集められている。これらは、興梠義彦氏が杉林を開く際に、堂の背後周辺の土中から掘り出して集められたものだという。


目的の板碑は、自然石で、直接土中に下部を埋め込まれている。





塔高;107.5センチ


最大幅;71.0  最大厚;27.0





碑の下部は、右側面から中央部へ大きく切れ込んでいる。


全体に、上に行くほど薄く、幅も小さくなる。


石材は、碑面をある程度整えてはいるが、全体に凹凸が多く、側背面は切り出しのままに残している。


碑面一杯に、線刻で立像3体を三尊形式に配し、右端に一行の刻銘がある。


像の刻線は、石材の目の粗さを考慮してか、割合に太く、明瞭に彫り込まれ、肉眼でもある程度まで識別できる。


像は、それぞれ蓮台上に頭光を負って立ち、三道を表す。


本尊は、来迎印を結ぶ阿弥陀如来。像高33.5センチで中央上部に、脇侍より少し大きくし、右斜め前を向き、蓮台も僅かに傾斜させて、動きのある表現にしている。


脇侍は、2尊とも斜め中央を向いている。像高29.5センチ。


右像は、錫杖と宝珠を持った地蔵菩薩。


左脇侍は、合掌手で僅かに膝を折った、地蔵と同形の比丘形像を配している。


三尊の構成は、来迎を表現していると思われる。





銘は、右端に一行。


「干時大永□丁□三月吉日施主敬□」


「永」は半分欠け、年次及び干支の一字が欠失している。大永年号で「丁」のあるのは7年の「丁亥」。


「敬白」の「白」字が決失している。


線刻像の表現は、大永7年の年号に良く合っているように思われる。蓮弁の中央弁を丸く膨らませ、幅の広い弁葉を重ね、側面5葉で作る表現は、熊本県中・北部地域の大永年号の蓮弁と近似している。(1.熊本城内 大永四年銘線刻如意輪観音坐像自然石板碑、2.玉名市 本堂山 大永四年銘線刻地蔵菩薩立像自然石板碑)


線刻された像の表現も、室町時代後期末から桃山時代にかけて多く見られる、類型的で簡略な表現までには、まだ、陥っていない。





上に述べたとおり、阿弥陀如来を本尊にして、地蔵菩薩と僧形合掌菩薩の三尊配置について考えてみたい。


阿弥陀三尊は、通常、阿弥陀如来に観音菩薩、勢至菩薩の2菩薩を配している。ところが、本碑は、通常と異なった三尊配置になっている。


天台宗系浄土宗で、比叡山三塔のうち横川常行堂には、本尊阿弥陀如来に観音、勢至及び比丘形の地蔵、竜樹の4菩薩を配していたといい、この5尊配置は、藤原時代の貴族社会で流行したという。また、聖衆来迎図の多くに比丘形像が2体含まれ、その一方は地蔵で、他方は竜樹とされ、その場合、竜樹は合掌手で表現されるのが通常である。


無住著「沙石集」に阿弥陀如来(法蔵比丘)と地蔵は同体であり、また「地蔵は八寒八熱の地獄の苦患を助け人中、天上、諸仏の浄土へ送り給うをや」とされ、死後の地獄は必定という恐れから、まず、地蔵によって地獄からの救済を受けた後、地蔵の導きで確実に阿弥陀の極楽浄土に往生出来るようにという施主の悲願の具体的作善として、阿弥陀に地蔵、竜樹(地蔵と同形、同体)を侍立させたのではないか。


石造遺物で、阿弥陀三尊の脇侍の内、勢至菩薩を地蔵菩薩に変えた例は鎌倉時代後期頃にすでにあり、九州に例を引くと、福岡県豊前市求菩提阿弥陀窟自然石図像板碑(南北朝時代)は、一枚の自然石の表裏に阿弥陀と地蔵を線で陽刻している。大分県国東町岩戸寺六地蔵幢には、龕部八面の六面に六地蔵、一面に阿弥陀三尊、他一面に十王の内の三王を表し、文明十年(1478)の造立。豊後高田市梅ノ木楪両面碑伝型板碑(室町中期ころ)は、両面に三尊種字を配し、一面に「バク」「キャ」「サ」、もう一面に「キリーク」(阿弥陀如来)を主尊にして「カ」(地蔵菩薩)「イー」(地蔵菩薩)の地蔵二尊を配している。両面共に変則的な三尊配置ながら、阿弥陀に地蔵二尊を脇侍に配置した例が、距離はあるものの時代を近似して存在しているのは興味深い。





1978.08.11調査





参考文献;『九州の石塔上・下巻』(多田隈豊明著 西日本文化協会)


     『日本の美術12浄土教画』(岡崎譲治編 至文堂)


     『仏像図典』(佐和隆研編 吉川弘文館)


     『地蔵信仰』(速水侑著 塙書房)


     『野ほとけ』(奈良石仏の会編・発行)










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