「医師の大量処方が覚せい剤中毒死の約25倍の死者を出している」とした伊藤隼也さんの著書が非難されている。
山本一郎なるブロガーが、そのデータの解釈における1つのミスを引き合いに出し、他の正当な批判まで一緒くたにすることでその評判を落とそうとする記事をYahooに投稿している。

元になったデータは、2010年に知り合いの新聞記者が私に送ってきた東京都監察医務院の研究論文である。
伊藤氏と小学館編集部が使ったデータはそのフォロー論文2011年版である。

山本一郎なるブロガーが指摘しているのは、
「医師の大量処方が覚せい剤中毒死の約25倍の死者を出している」という記載である。
突っ込みどころ満載であるが、明確に指摘しておく。

-ブログより転載-
伊藤さんの問題を指摘されている内容が結構派手でして、このTogetterまとめでもあるとおり
「『自殺者』と『抗うつ剤の売り上げ』がほぼ同じ時期から増え始めていた!」とか「医師の大量処方
が覚せい剤中毒死の約25倍の死者を出している」などと、明らかにトンデモなもので、まあ単純にガ
セネタの類ではないかと思います。

本書第2章「医師の大量処方が覚醒剤中毒死の約25倍の死者を出している」の根拠は、監察医務
院福永氏の報告書で「06年~10年の死因不明遺体に対する行政解剖13499件において検出された
薬物は覚醒剤136件に対し医薬品等3339件」というもの

とりわけ、医師が抗うつ剤などの大量処方が理由で自殺者が増え、結果として覚せい剤による死者の
25倍に至るというデータは、問題の発端となっている東京都監察医務院の資料を見ても確認できませ
ん。また、医師に直接取材した体になっていますが、死者の絶対数の話であって、死因や母数に関して
は何の情報も記載されておらず、死亡率での比較であるべき本件ではまったく信頼できる記述になって
いません。

まず、事実を確認しておく。
データ元は、
『平成22年度厚生労働科学研究費補助金(医薬品.医療機器等レギュラトリ分担研究報告書
監察医務院における薬物検出の実態関する研究
分担研究者福永龍繁東京都監察医務院院長
研究協力者谷藤隆信同上(主任)
柴田幹良同上(主任)』
である。

小学館の本の記載で間違っているのは、検出件数を死亡者数としたことである。
覚せい剤の検出数139件に対し、医薬品び検出数3339件である。
139×24=3339
これが24倍の根拠である。

東京都監察医務院に確認したところによると、
剖検による検出数と言うのは、
医薬品の場合、
胃内容物、血液、尿であり、1死亡当たり約3件検出されるという。
つまり、1死亡例当たり3件の検体があるということだ。
覚せい剤の場合は、胃には検出されないので、血液、尿から検出される。
つまり、1死亡例当たり2件の検体があるということだ。
死亡者数に換算するなら、
医薬品の場合は三分の一(小さく見積もって)、覚せい剤は二分の一にすれば、ほぼ死者数に換算できる。
3339/3=1113
139/2=69.5
1113/69.5≒16

正しい記述は、
「医師の大量処方が覚醒剤中毒死の約16倍の死者を出している」
となる。

24倍は確かに間違いであるが、事実は16倍である。
「明らかにトンデモなもので、まあ単純にガセネタの類ではないか」という記述は適当ではない。
東京都医務監察院の扱った不審死の中で、覚せい剤の死亡者数の16倍の処方薬中毒による死者数が居るのは事実である。
さらに正確を期せば、「薬物中毒死と判定された中で、医師の処方した向精神薬が覚醒剤の16倍の中毒死が確認されている」
と記述すれば文句なしである。

さらに、今年、発表された研究
「過量服薬による致死性の高い精神科治療薬の同定」精神神経学雑誌118-1(2016)
では、次のように記述されている。
日本では、急性期病院への緊急入院が必要な主要疾患の中で、過量服薬は救急救命センターへの搬送率が最も高い傷病であることが示されている。また救急センターにおける過量服薬による搬送者数は増加傾向にあり、その多くが精神治療薬を過量服用していることが明らかにされている。加えて
過量服薬による搬送者数の増加は、精神科診療所の増加に伴っているとの指摘もある。さらに、精神科通院中の自殺既遂者の多くは、致死的手段の実施前に過量服薬をし、衝動性が高まった状態で既遂に至っているとの報告もある。


これは、衝動的に自死した事例の背景(薬物中毒とされていない事例)にも、過量服薬(過量処方)が絡んでいることを指摘しているのである。
事実、全国自死遺族連絡会のデータでは、20代、30代、40代の自死者の精神受診率はほぼ100%である。
厚労省のデータでも自死者の50%以上が精神科受診中であったことを示している。

つまり、覚せい剤の16倍どころではなく、さら多くの死に向精神薬の関与が疑われるのである。
実際に、我々被害者会の証言もそれを裏付けている。

この山本一郎成るブロガーが数字の間違いを指摘しているのは、この24倍という数字だけである。
あとは、一部の悪徳医師がやっているだけのことで、全ての医療を否定しているなどと記述している。

一つの間違いを元に、すべてを否定するという、三流の詐欺師はこの山本氏の方である。
他の主張の間違いもデータで示して頂きたい。
精神医療が、うつ病患者を治療出来ているというデータも示して頂きたい。

多剤大量処方が何故規制されたか?
日本睡眠学会が何故、睡眠薬の処方を6カ月ごとに休薬せよとのガイドラインを出したのか?
何故、ベゲタミンが販売停止になったのか?

これらをちゃんと説明して頂きたい。

多剤大量処方の規制に対して、精神医学界の重鎮は、自分達医師がちから及ばずであったと述べている。
この多剤大量処方の規制に対して、我々被害者はずっと主張してきたのである。
伊藤氏と小学館の記事、本はその主張を強力に後押ししてくれたのである。

この山本一郎成るブロガーは一体何者なのか?
伊藤氏が、グラビアカメラマンであったことにも触れて、人格攻撃しているところなど、誹謗中傷以外の何物でもない。
この記事が公開された途端、
子宮頸がんワクチン推進の利益相反だらけの医師達が大喜びしているが、
何なんでしょうね。

ベゲタミンが販売停止になったのは、
我々の主張、それに伴う精神医学会の注意喚起。
それでも、被害が減少するどころか拡大したからである。

注目されていなかった東京都監察医務院の中毒死データが世の中に出されたからである。
多剤大量処方の規制、薬物中毒死の主役であるベゲタミンが無くなることで、どれくらいの被害が食い止められたであろうか。
この山本一郎氏のこの記事は、これまでの被害者の血の滲むような努力、そして製薬会社にベゲタミンの販売停止を申し入れた精神医学界の行為をもないがしろにしかねないものである。