精神科治療学27(1)睡眠薬の多剤併用の意義と問題点より
冒頭部分を抜粋。

以下引用
睡眠薬が多剤併用あるいは大量投与されている症例を見ることがあるが、このような処方をしても不眠の改善は期待できず、様々な弊害を引き起こす。睡眠薬多剤併用・大量投与は、不眠及びその治療、睡眠薬に対する精神科医の知識不足から引き起こされていることが多い。

・・・そうですか・・・
今更、何をと怒り心頭であるが、公式な論文としては役に立つ。

論文中の気になった知見を書きだす。

・SSRIは不眠を引き起こす。
(不眠治療にSSRIを加えている処方を見かけるが、根拠がないどころか逆効果であることがわかる。)

・バルビツール酸系睡眠薬と非バルビツール酸系睡眠薬は、大量服薬による危険性が高く、耐性を形成しやすいため、慢性の不眠の治療に用いるべきではない。
(もう、不眠症の治療としてはバルビタールは論外ということだ。)

BZ系睡眠薬とNon-BZ系睡眠薬は、中枢神経系でGABAa受容体複合体は、5つのサブユニットからなり、CI-チャンネルを形成している。GABAがGABA結合部位(GABAサイト)に結合するとCI-チャンネルが開き、細胞膜電位の過分極が起こり、神経細胞の活動が抑制される。GABAa受容体にはGABA以外にもエタノール、バルビツール酸、BZ、ニューロアクティブ・ステロイドの結合サイトがあり、これらの物質が結合することでGABAa受容体の立体構造が変化し、GABAの作用が増減、あるいは減弱する。エタノールとバルビツール酸を高用量投与すると、GABAがGABAサイトに結合しなくてもCI-チャンネルが開き、神経細胞の活動を抑制するため、これらを多量に服用すると呼吸抑制により死亡することがある。これに対して、BZとNon-BZがGABAアゴニストとして作用するためには生理的なGABAの放出が必要であるため、安全域が広い。また、通常の臨床用量のBZとNon-BZにより、中枢神経系のBZサイトの50%以上が占有されており、用量を増やしても作用は頭打ちとなる。


・ベンゾ系睡眠薬は、通常の用量で頭打ちとなる。併用は意味が無い。
・アルコールとバルビツールは、直接的にGABAの代わりをするから危険。

ベンゾが単独では致死に至らず、アルコールやバルビタールとの併用が事故を起こすことが良く説明されている。

これらの知見は、中毒死のデータとも整合性が高い。

年間何千人も、ベンゾとバルビタールとアルコールで死んでいるのにこれを放置している。
これを怠慢といわずして何と言おう。