再チャレンジ東京というNPOがあります。
膨大な借金に苦しむ、中小、零細企業の経営者の相談に乗り、借金の整理方法などを指導し実績を上げている組織です。
彼らの素晴らしいのは、数千に及ぶ相談者に1人の自殺者も出していないという実績です。

簡単なことです。彼らは、相談者の悩みの成因を取り除くことに成功するからです。

私自身も経営者で、莫大な借金を抱えたことがあります。

この国のシステムは、向精神薬の副作用被害者が救われないようになっているのと同じように、中小、零細企業の経営者に対しても冷酷なシステムになっています。

私は、早めに決断し、会社を畳みましたが、いまだに多くの経営者が国のモラトリアム保証を使って従業員の給料を支払っています。ひたすら、売り上げが回復することを信じて。
ハッキリ言っておきますが、景気が回復することなどありません。
今回の不況は、構造的なもので、景気循環によるものではない。

日本のシステムが冷酷なのは、会社の資金繰りのための借金全てを経営者個人が負うことになっていることです。
景気が良い時には何の問題はないが、いざ景気が悪化した時には、経営者個人に負債が集中するような仕組みになっているのです。その借金は何処までも追ってくる。

住宅ローンも同様です。
景気の波は、経営者の責任ですか?
不動産が下がるのは、住宅の購入者の責任ですか?
会社の借金は会社を解散したら、住宅ローンは住宅を手放したら、チャラと言うのが国際標準です。

融資の条件に経営者には、保険に入ることを要求されることさえあるのです。つまり、暗に返せなくなったら、自殺して保険金で返済せよと言われているようなものです。

家族や従業員の為、経営者は死ぬのです。
この国のシステムは、
再チャレンジ不可能なシステムになっているのです。

本当の自殺対策とは、精神科を受診させることでもないし、
駅のホームに防止柵を作ることでもない。

NPO再チャレンジ東京は、そうした経営者に本当のことを伝えるのです。
借金で死ぬ必要がないこと。どうやって借金を整理するかということ。
逃げ道を、解決策を示してあげることです。

そして、この追い込みシステムを改善することです。

「若い時の苦労は金を払ってでもしろ。」
そう教わった覚えがある。
しかし、そう思って実践したものが、一度の失敗で再起が出来なくなる。本当は一番学んだはずの貴重な人材を殺すシステム。
結果、世の中全体が、失敗を恐れるようになり、レールから外れまいと皆が必死にしがみつく。
揚句の果てに、薬を飲み、あっけなく本当に死んでしまう。

現在、モラトリアム法により、45兆円もの金が、中小企業の資金繰り(正確には返済猶予)に使われている。その件数なんと165万件。
通常経営者は、こうした返済猶予を利用すると次の借入が出来なるなることを怖れるが、背に腹は変えられないと思っているのだ。

政府は、これをやめる機会を失った。
もう、この制度なしには、多くの中小企業は存続できない。

まあ、もう誰もこの借金は返せないし。なんなら返さなくて良い。
このままずっと、塩漬けだろう。
銀行には、45兆円の不良債権があるという事だ。

中小企業も、金融も、年金も、健康保険も、みーんな国頼み。
資本主義の国とはとても思えない。
(これは、他国も似たようなものだが。)

みんな大きな勘違いをしている。

世の中には、ある一定の量のお金があって、それの取り合いをしていると。
実は違う、お金は増えたり減ったりしている水物なのだ。それもダイナミックに。
お金とはそれほど実態があいまいな代物。

どうしようもないものを解決するにはどうするか。

ダメなものはもう塩付けにしてほっておいて、横で新しいことを始めるのだ。
大切なのは、出直す勇気である。

本当の自殺対策とは、やり直しができる(再チャレンジ)という希望を持てる社会をつくることです。