本日のkebichanの記事に出ている『精神科薬物相互作用ハンドブック』を読んでいます。

監修は、上島国利氏と樋口輝彦氏。

この相互作用のハンドブックに書かれていることは、今まで私がこのブログ上で指摘してきた薬物相互作用に関する記述と、寸分の不整合もない内容です。

そもそも、私の記述は、医薬品添付文書と薬理学の教科書の知識だけです。
不整合が無いのは、当たり前と言えば当たり前なのだが、こうやって改めて症例が示されることによって、さらに自信を持ちました。

この本の元になった文献は、2003年当時の英米のものです。

詳細な内容は、後日まとめてお伝えしたいと思いますが、今日のところは重要そうな薬物相互作用についてピックアップして、警告としたい。

この本では、P450(CYP)の絡む薬物相互作用として次の6つに分類している。

1.ある薬に、その阻害薬が投与された場合
2.阻害薬に、その阻害対象薬が投与された場合
3.ある薬に、その誘導薬が投与された場合
4.誘導薬に、その誘導対象薬が投与された場合
5.阻害薬の中止
6.誘導薬の中止

多剤大量処方からの減薬において、この知識は重要です。
薬を止める順番を間違えると大変なことになります。

需要な相互作用例

パキシルと3環系抗うつ剤との併用による血中濃度の上昇。
(3環系の心毒性が増強される。)

カルバマゼピンとアルプラゾラムの併用。
(カルバマゼピン(CYP3A4誘導作用)をやめるとアルプラゾラムの作用を増強。)

グレープフルーツとCYP1A2代謝薬及びCYP3A4代謝薬。

カフェインとルボックス(CYP1A2阻害)

ルボックスとジプレキサ(過鎮静)

ルボックスとジアゼパム(過鎮静)

ルボックスとフェニトイン

ジョイゾロフトとトリプタノール

カルバマゼピンとハロペリドール

SSRI(パキシル、ルボックス)とリスパダール

ジョイゾロフトとラミクタール

インドメタシンとリーマス

カフェインとリーマス

フェノバルビタールと誘導対象薬

ルボックスとカルバマゼピン

クラリスロマイシンとCYP3A4代謝薬

アスピリンとデパケン

カルバマゼピンとリスパダール

ルボックスとイミプラミン

カルバマゼピンとイミプラミン

ジョイゾロフトとイミグラミン

・・・etc

とまあ、様々な組み合わせが紹介されている。
どうでしょうか?被害に会われた方、病状が悪化した方、この中に同じ組み合わせはありませんか?

それぞれの有害事象が記述されているが、これらを個別に覚える必要はない。

幾つかの代表的な相互作用薬(SSRI、カルバマゼピン、バルブロ酸、フェニトイン、バルビタール)の薬理を覚え、日々使用する薬剤の基本の代謝を知っていれば、被害の大半は防止できる。

この本を読んでいて、気が付いたことがある。

日本の精神医療の現場と、欧米の精神医療の現場の決定的な違いである。

この本で紹介されている症例全てにおいて、各薬剤の血中濃度が測定されているのである。

幾つかの症例の記述の中に、クリニックから状態悪化した場合に、救急病院に血中濃度の測定に回される記述がある。

この事実は、精神医療にTDM(薬物濃度のモニタリングによる治療)が根付いていることを示唆している。
TDMの記事