少し、勉強が進んだので、報告です。

ベゲタミンは、やはり日本の多剤大量処方の象徴です。
薬物の相互作用の危険性をすべて兼ね備えているからです。
見事ですよ。

まず、前提となる基本的な知識を書きますので理解してください。

薬の相互作用は、大きく分けて3つあります。

1.代謝酵素(CYP)の競合
2.他の薬物の効果そのものを増強する
3.蛋白結合の競合
(上から順に、影響が大きいと理解してください。)

日本人の4人に1人は、代謝酵素CYP2D6の活性が低い。
活性化低い人の代謝能力は、活性が普通の人と比べると約半分だそうです。
(臨床薬理学)

効果量と安全量の差が小さい薬は危険。

蛋白結合率の高い薬が、蛋白結合の競合すると危険。


ベゲタミンは、これらの特徴をすべて兼ね備えています。
いや、逆に言えば、こうした特徴を利用して作られたのが、ベゲタミンという薬です。

ベゲタミンの3つの成分、フェノバルビタール、クロルプロマジン、プロメタジンは、すべて代謝酵素がCYP2D6です。蛋白結合率は、フェノバルビタールが60%と低く、クロルプロマジン、プロメタジンは非常に高い95%以上。

全て、劇薬。

この中で、クロルプロマジン、プロメタジンの2つのフェノチアジン系の薬品は、CYP2D6酵素との親和性が高く、結果他の薬剤のCYP2D6の代謝を阻害します。

さらに、クロルプロマジンは、他の薬剤の効果を2倍から10倍に強めます。
(おそらく、プロメタジンも同様。)

フェノバルビタールは、バルビツレートですから、そもそも安全域の狭い薬です。

代謝酵素は、CYP2D6ですから、日本人の4人に1人は、この薬は効き過ぎるということです。

ベゲタミンは、それぞれの薬の効果を薬品の相互作用を使って増強し、その薬効を得ているのです。


それでも、この薬が単剤で、規定量を守っていれば、中毒にはなりません。

しかし、もともと安全域の狭いバルビツレートを含めた3つの劇薬で構成されていて、相互作用で中毒量は、それぞれ単剤に比べはるかに下がっているのです。そして、重要なのは、ベゲタミンには、他の薬(CYP2D6代謝薬)の効果を倍増させるメカニズムを内包しているということです。


バルビツレートは、効果量の10倍くらいから中毒量です。
それほど、安全域の狭い薬です。
CYP2D6の代謝が弱い人であれば、効果量の5倍で中毒量です。
クロルプロマジンもプロメタジンも劇薬ですから、安全性の高い薬ではありません。

このベゲタミンに他の薬を併用したらどうなりますか?

そもそも、相互作用のデパートみたいな薬ですから、他の薬との併用はどれだけ危険かということです。

CYP2D6を代謝薬とするのは、殆んどの抗うつ剤、統合失調症薬です。
デプロメール、パキシルなんてCYP2D6そのものを阻害するので論外です。
ベゲタミンとそれらの薬との併用は、絶対にダメです。

逆にベンゾとの併用は、フェノバルビタールのCYP3A4の誘導作用(それも強力)で、急激に代謝されるという逆効果があります。

いかにベゲタミンという薬が危険かわかっていただけたでしょうか。


こんな薬を放置して、年間数千人の中毒による死者をだしているのですよ。

これを乱用による患者の責任とすることは出来ますか?
そもそも、処方薬依存症にして、ベゲタミンにまで手を出させたのはだれでしょう?

厚生労働省は、これをもう50年近く、放置してきたのです。

これは、史上最悪の薬害です。