PMDAの副作用事例とか、被害者の事例とか、重篤な結果になった事例をみると、すべてに明確な原因があることが判るようになった。
私の知識の元は、医薬品の医師向け添付文書と薬剤師向けの医薬品インタビューフォームそれから、ネットで得られる情報、それとネットで引っかかる論文である。
特に、なめるほどじっくり見ているのは、医薬品インタビューフォームである。
なめるほど見ていて気が付いたことがある。
この添付文書とかインタビューフォームには、薬の相互作用が記述されている。併用禁忌や併用注意の薬品名やその理由が書かれているのだが、そこに記載されているのは、ほんのわずかなのである。
例えば、ハルシオンの添付文書には、併用禁忌の情報として次の記述がある。
(併用しないこと)
1.
薬剤名等
イトラコナゾール
(イトリゾール)
フルコナゾール
(ジフルカン)
ホスフルコナゾール
(プロジフ)
ボリコナゾール
(ブイフェンド)
ミコナゾール
(フロリード)
HIVプロテアーゼ阻害剤
インジナビル
(クリキシバン)
リトナビル
(ノービア) 等
エファビレンツ
(ストックリン)
臨床症状・措置方法
本剤の血中濃度が上昇し、作用の増強及び作用時間の延長が起こるおそれがある。
機序・危険因子
本剤とこれらの薬剤の代謝酵素が同じ(CYP3A4)であるため、本剤の代謝が阻害される。
注目してほしいのは、最後の機序・危険因子の部分である。
CYP3A4というのは、薬の代謝酵素で一番多いのである。ハルシオンと同じベンゾジアゼピン系の薬はすべてCYP3A4を代謝酵素とする。
上記の薬剤を併用禁忌とするなら、ベンゾジアゼピンの薬はすべて併用禁忌にせねばならないはずだ。セルシン(ジアゼパム)などは、蛋白結合の競合も起こすから、さらに危険である。
と思って、上記禁忌薬の添付文書を読むと別の事が書いてある。
それらの薬の添付文書からも、ハルシオンは併用禁忌であるが、その機序・危険因子の説明が違う。上記の薬はすべてCYP3A4の活性を低下させる阻害薬なのだ。
CYPの阻害には、競合的阻害(同じCYPの薬どうしで起こる)と阻害(CYPの活性そのものを阻害する)がある。前者は、CYP3A4の取り合いをするのに対し、後者はCYP3A4そのものを減らすのである。
それぞれの薬の併用禁忌には、ハルシオンの他に、同じベンゾ系のミタゾラムが出ている。
ハルシオンやミタゾラムは、CYP3A4の阻害薬ではない。ハルシオン、ミタゾラムを併用禁忌にするなら、ベンゾ系薬品はすべて併用禁忌にしなければならない。
また、ミタゾラムの併用禁忌は、ハルシオンに掲載される併用禁忌の一部しか記載されていない。
このように、薬剤名を名指しにすることは、間違いの元である。記載するなら、ベンゾジアゼピン系薬品と書いた方が、間違いがない。
精神科領域では、代表的な阻害薬は、パキシルとデプロメールである。
パキシルはCYP2D6を、デプロメールは、いろいろあるが、特にCYP1A2を阻害する。
先のハルシオンと併用禁忌の組み合わせの機序・危険因子の説明を当てはめると、パキシルは、殆どの他の抗うつ剤、統合失調症治療薬、てんかん薬と併用禁忌でなければおかしい。そしてデプロメールはジプレキサと併用禁忌でなければおかしい。
阻害の強弱はあるが、パキシルもデプロメールも、阻害作用は強い。
医薬品添付文書は、このように完全ではない。
併用注意と併用禁忌の境目は非常にあいまいなのだ。
だから、併用注意は決して無視して良い記述ではない。
しかし、このように様々な医薬品添付文書を読んでいくと、そこに相互作用の法則が見えてくる。
ハルシオンがダメなら、ミタゾラムもダメだし、ソラナックスもセルシンもワイパックスもみんなダメだと連想できない方がおかしい。
精神科医には、なぜ、こうした連想力がないのだろう、不思議でしょうがない。
最近になってその理由が少しわかった。
CYPを無視しているのは、前からわかっていたが、それよりもっと深刻な理由がわかった。
つまり、CYPどころか、
副作用を考えたことがないのだ。
副作用からものを考える習慣がないのだ。
だから連想できない。
だから、医薬品添付文書が読めないのだ。
患者の苦しむ症状をみて、副作用を疑い、添付文書を読み直す習慣があれば、相互作用にたいする知識は自然に向上するはずである。
つまり、患者にたいする真摯な姿勢が決定的に欠けているのだ。
もし、そうした姿勢をもって、治療に臨んでいたなら、日本の精神医療はもっと飛躍的に進歩していたはずである。そしてなにより、現在の被害者の殆どは被害を受けていない。
なにしろ、被害の殆どは、医薬品添付文書を真面目に読んでいれば、発生しえない被害なのだ。
欧米の被害と日本の被害は、全く性質が違う。
欧米の被害は、本当の薬害であるが、日本の被害の大部分は、医師の過失である。
私の知識の元は、医薬品の医師向け添付文書と薬剤師向けの医薬品インタビューフォームそれから、ネットで得られる情報、それとネットで引っかかる論文である。
特に、なめるほどじっくり見ているのは、医薬品インタビューフォームである。
なめるほど見ていて気が付いたことがある。
この添付文書とかインタビューフォームには、薬の相互作用が記述されている。併用禁忌や併用注意の薬品名やその理由が書かれているのだが、そこに記載されているのは、ほんのわずかなのである。
例えば、ハルシオンの添付文書には、併用禁忌の情報として次の記述がある。
(併用しないこと)
1.
薬剤名等
イトラコナゾール
(イトリゾール)
フルコナゾール
(ジフルカン)
ホスフルコナゾール
(プロジフ)
ボリコナゾール
(ブイフェンド)
ミコナゾール
(フロリード)
HIVプロテアーゼ阻害剤
インジナビル
(クリキシバン)
リトナビル
(ノービア) 等
エファビレンツ
(ストックリン)
臨床症状・措置方法
本剤の血中濃度が上昇し、作用の増強及び作用時間の延長が起こるおそれがある。
機序・危険因子
本剤とこれらの薬剤の代謝酵素が同じ(CYP3A4)であるため、本剤の代謝が阻害される。
注目してほしいのは、最後の機序・危険因子の部分である。
CYP3A4というのは、薬の代謝酵素で一番多いのである。ハルシオンと同じベンゾジアゼピン系の薬はすべてCYP3A4を代謝酵素とする。
上記の薬剤を併用禁忌とするなら、ベンゾジアゼピンの薬はすべて併用禁忌にせねばならないはずだ。セルシン(ジアゼパム)などは、蛋白結合の競合も起こすから、さらに危険である。
と思って、上記禁忌薬の添付文書を読むと別の事が書いてある。
それらの薬の添付文書からも、ハルシオンは併用禁忌であるが、その機序・危険因子の説明が違う。上記の薬はすべてCYP3A4の活性を低下させる阻害薬なのだ。
CYPの阻害には、競合的阻害(同じCYPの薬どうしで起こる)と阻害(CYPの活性そのものを阻害する)がある。前者は、CYP3A4の取り合いをするのに対し、後者はCYP3A4そのものを減らすのである。
それぞれの薬の併用禁忌には、ハルシオンの他に、同じベンゾ系のミタゾラムが出ている。
ハルシオンやミタゾラムは、CYP3A4の阻害薬ではない。ハルシオン、ミタゾラムを併用禁忌にするなら、ベンゾ系薬品はすべて併用禁忌にしなければならない。
また、ミタゾラムの併用禁忌は、ハルシオンに掲載される併用禁忌の一部しか記載されていない。
このように、薬剤名を名指しにすることは、間違いの元である。記載するなら、ベンゾジアゼピン系薬品と書いた方が、間違いがない。
精神科領域では、代表的な阻害薬は、パキシルとデプロメールである。
パキシルはCYP2D6を、デプロメールは、いろいろあるが、特にCYP1A2を阻害する。
先のハルシオンと併用禁忌の組み合わせの機序・危険因子の説明を当てはめると、パキシルは、殆どの他の抗うつ剤、統合失調症治療薬、てんかん薬と併用禁忌でなければおかしい。そしてデプロメールはジプレキサと併用禁忌でなければおかしい。
阻害の強弱はあるが、パキシルもデプロメールも、阻害作用は強い。
医薬品添付文書は、このように完全ではない。
併用注意と併用禁忌の境目は非常にあいまいなのだ。
だから、併用注意は決して無視して良い記述ではない。
しかし、このように様々な医薬品添付文書を読んでいくと、そこに相互作用の法則が見えてくる。
ハルシオンがダメなら、ミタゾラムもダメだし、ソラナックスもセルシンもワイパックスもみんなダメだと連想できない方がおかしい。
精神科医には、なぜ、こうした連想力がないのだろう、不思議でしょうがない。
最近になってその理由が少しわかった。
CYPを無視しているのは、前からわかっていたが、それよりもっと深刻な理由がわかった。
つまり、CYPどころか、
副作用を考えたことがないのだ。
副作用からものを考える習慣がないのだ。
だから連想できない。
だから、医薬品添付文書が読めないのだ。
患者の苦しむ症状をみて、副作用を疑い、添付文書を読み直す習慣があれば、相互作用にたいする知識は自然に向上するはずである。
つまり、患者にたいする真摯な姿勢が決定的に欠けているのだ。
もし、そうした姿勢をもって、治療に臨んでいたなら、日本の精神医療はもっと飛躍的に進歩していたはずである。そしてなにより、現在の被害者の殆どは被害を受けていない。
なにしろ、被害の殆どは、医薬品添付文書を真面目に読んでいれば、発生しえない被害なのだ。
欧米の被害と日本の被害は、全く性質が違う。
欧米の被害は、本当の薬害であるが、日本の被害の大部分は、医師の過失である。