4.この問題を深刻化させた要因







(1) 薬の危険性の過小評価と効果の過大評価







・副作用報告制度が機能していない







 年間、1500人以上が、処方薬による薬物中毒で亡くなっています。内半数が自殺目的での過量服用ですが、残りの半数は、中毒死、不詳の死と分類されています。


 その中毒死のさらに半数には、べゲタミンという薬が絡んでいます。


 そのべゲタミンの2004年から2009年の5年間の副作用情報を参照したところ、何件の死亡事例の報告があったと思いますか?


 べゲタミンの副作用報告は、5年で、なんと13件しか報告されていない。


 年換算すると、2.6/750です。


 


 現在、副作用報告は、医療従事者と製薬会社に限られています。


いわば、医療従事者と製薬会社の良心に任されていると言う事です。


残念ながら、この事実を知れば、信用できません。患者サイドからの副作用情報を収集する仕組みが必要です。







 これは、日本医療界にとって非常に不幸なことです。自ら、治療、治療薬の進歩を妨げているのと同じことです。







薬は、承認発売後から、本当の臨床試験が始まります。現在の治験データは、開発、販売元の製薬会社が作成しており、第3者の十分な検証を経ていません。







抗うつ剤パキシルの離脱症状の発現率は、現在、英国では25%とされています。


発売当初の発現率は0.2%、10年後には25%となったのです。厚生労働省もその変更を受け、医薬品添付情報を改定していますが、全て海外情報頼みであるのが実情です。







日本の副作用報告制度は、全く機能していないということです。







 他の薬害もそうであるように、被害者が死に物狂いで薬害を証明して初めて、問題となるのです。







 患者の声が、全く無視されていると言う事です。







・多剤大量処方は、薬理学を無視





 医薬品添付情報は、単剤での治験、臨床データが記載されています。多剤併用での治験、臨床データは存在していません。そもそも、多剤大量処方は、安全性の確認されていない危険な治療と言う事です。


処方薬の治験は、単剤での治験が殆どで、まれに2剤間で行われているに過ぎません。





それぞれの薬は単剤での血中濃度が一定になるように設計されて、用量が決められて


います。複数の薬をその規定量まで処方すると肝臓の処理能力を越え、血中濃度が上がり、薬の効果が増強されます。





これは、薬理学の基本中の基本です。多剤併用は薬理学を無視しています。


 


 それでも、医薬品添付情報には、併用注意や使用上の注意として慎重に投与することなどの記述があります。べゲタミンやパキシルは、冒頭に劇薬との表記があります。ベンゾジアゼピン系の薬には依存性薬品と記述されています。


 十分ではありませんが、この医薬品添付情報を順守すれば、そもそも多剤大量処方などあり得ないのです。





 医師は、医薬品の添付情報を、製薬会社の言い訳ぐらいに思っているフシがあります。