以前、取引のあった大手IT企業の総務部門の役員と話をした。


随分前から、ソフトウエア技術者に対するメンタルヘルス対策に関して忠告をしていた。


実は、自身の会社整理で、この会社に欠ける迷惑を詫びるために訪れたのだが、世間話の中で急にメンタルヘルスの話を始めた。


「以前言われた事なんだけれどね。自宅休養させても、一人も帰って来ないんだよ。」


この会社は、産業医(精神科)を抱えている。

とても真面目な会社で、社員のメンタルヘルスにも真剣に取り組んでいる会社である。


企業にとって、この問題は、もう見過ごせないレベルに達している。

人の頭脳が売り物のソフトウエア開発業においては死活問題である。


薬を飲みながら仕事をするのは論外。

一人分の戦力を失うのではない。その人のフォローの為にさらに労力が、かかることになる。

(その人を責めているのではありませんよ。)

休職中の手当てなどを含め、

原因が、会社の労働環境にあるのならともかく、家庭問題や個人的な問題についても企業が責任を持つのは明らかに行き過ぎである。


この会社は真面目なので、産業医のアドバイスを信じ、様子のおかしい社員を休職させ、休職手当(1年以上)を支払っている。


もちろん、社員の職場復帰を期待してのことである。


結果は、

誰も帰って来なかったのである。


つまり、この会社の例では、精神科治療は、一人も復職させることが出来なかったのだ。


いや、帰って来れるはずの人も帰って来れなくなっているのだ。

薬剤性の精神病に陥っていると僕は断言する。


企業のメンタルヘルス対策の担当者は、そろそろ目を覚ました方が良い。


実は、一社だけ上手くやっている会社を知っている。


光学関連のメーカーなのだが、この会社は、復職の条件として、

服薬しないで職務に就ける状況にあることをあげている。


この会社の社員は帰って来ている。