昨晩、長らく、ご無沙汰していた西麻布のバーに行った。


恵比寿に住んでいた頃には、よく顔を出していた。

女性だけでやっている店で、逞しく、西麻布近辺の小金持ち男達を相手に、実にたくましく経営をやっている。


みな生き生きとして働いている。


そこの馴染みの女の子がいる。

シンガーで、一応プロとして活動していた。

小柄で、とてもカワイイ。


見ているだけで眩しい。


久しぶりに会うと、5キロ太ったという。

元が痩せすぎぐらいな子であったので、あまり太ったという感じはしない。


もっと太って、誰にも相手にされなくなったら、僕のところに来いとか、

嫌がる彼女に、おごるから何か食べるかい?

などと軽口を叩いていた。


ひょんなことから、

彼女が、薬を飲んでいる事が判明した。


何飲んでるのか聞くと、デパスを飲んでいるという。

いわゆる精神安定剤である。

僕の妻を悪循環に陥れたのもデパスである。


そこから、色んなことを吐き出し始めた。

眠れないこと、

ここ半年近く、生理がおかしいこと。

歌をやめたこと。


ああ、彼女は、悪循環の入り口にいる。


太ったのも納得がいった。

このままでは、彼女からあの輝きが消えてしまう。


聞けば、オーナーの女性は、さらに薬依存に陥っているという。

このままいけば、店の崩壊も近い。


もう何年も前から彼女は知っているが、始めて僕の事情を説明した。

今日、僕が、ここに来たのも何かの縁だと思う。と言った。


もちろん僕は医者でもなければ、カウンセラーでもない。

けれど、デパスからどんなふうに薬物依存に陥り、悪循環に陥るかは、よく知っている。


そもそも、薬に手を出したのは、

些細な悩みである。


薬を飲んでく内に、最初の些細な悩みなどどこかに行ってしまう。

さらに大きな悩みが生まれるのだ。


肥満は、女性としは、大きな悩みの種となる。

その影響は、ただの肥満に留まらない。

生理が止まったり、不妊などの悩みが生まれ、家庭内ではセックスレスの元になる。

さらに薬が増え、悪循環が始まる。


中年男のスケベ心は横に置いておいて、

まずは、彼女の輝きを守りたい。

それが守れなくては、スケベ心の行き場も失う。

本末転倒に陥る。


僕に何が出来るだろう。

あまりにも僕は無力だ。


唯一、出来るのは情報を伝えることぐらいなのだ。