銀座のユニクロで買い物していたら、携帯が鳴った。




目の前で奥様が飛び降り自殺をした彼が、お礼の電話をくれたのだ。




精神科のカルテを保全する弁護士費用が捻出出来ないという彼に、自身で裁判所に保全請求を出す事を勧めた。それが受理されたのだ。




先日の自死遺族会の聞き取り調査の中で、


自宅で亡くなった方の100%が精神薬を服薬していたとの報告があった。



彼の奥様もまた例外ではない。




「死にたい死にたい。」という奥様に、


「死にたくなったら、これを飲みなさい。」


とリスパダールという薬を処方した。




リスパダールの医師向け医薬品添付情報には、自殺念慮のある患者には投与しないこととある。


ネットで検索すると自殺企図の報告が山のように出てくる。




つまり、死にたいと言っている患者に、死にたくなる薬を処方したら、ほんとに自殺したのである。


これが医師の過失でなくてなんだというのだ。


病気が悪化して死んだのだというのが、医師の言い分であろう。




普通の感覚で、考えて貰いたい。




僕は何もしていない。


彼の話を聞き、応援しただけ。




電話で彼は、


泣きながら、ありがとう、ありがとう


と何度も言った。




まだ、カルテの保全の為の一つの手続きが終わっただけである。




まだ、始まったばかりですよ。


といいながら、僕も貰い泣きをしてしまった。




遠く岡山の地と銀座の雑踏の中で、大の大人の男が電話をしながら、男泣きをした。




悲しみの涙ではない。




出会った時、彼は憔悴しきっていた。


自分自身も薬を飲もうとしていた。


目の前で妻を失った光景が、彼の心には刻み込まれている。




だが、裁判の準備を通して、彼は現実にキチンと向き合っている。


悲しみが癒えた訳ではないが、もう大丈夫だと思う。




その証拠に、


知人でイジメで自殺した子供の遺族の話をきいているのだという。




もう一人、似たような裁判を起こした人がいる。


頭の切れる方で、自力で裁判をしている。


強力な協力者である。




僕の裁判より、この人の裁判の方が、彼には役に立つ。




こうしたつながりを深めていけば、どんどん力が蓄えられていくだろう。


少しずつ、こうした輪を広げていくのが、僕の仕事である。




人の尊厳を踏みにじったこの医師を僕は許さない。


被害者は一人や二人ではない。