まるでドラマを見ているような展開だ。
めまぐるしく状況が移ろう。
天の采配は、僕が一所に留まることを許してはくれない。
会社は、いよいよ整理に入る。
お茶を濁そうとしたが、やはりそれは許されない。
もう、踊るIT社長の名は返上せねばならない。
この会社は、亡き妻と15年前に杉並のマンション(住居兼オフィス)で起業した。
妻の祖母にお金を借りたりしながら、会社を続けたのだ。
妻が亡くなり、その祖母も2年後に亡くなった。
結局、やはり、彼女達が居なければこの会社は無いということか。
裁判もいよいよ佳境を迎える。
色々な証拠資料を見直しているうちに、新たな重大な証拠を見つけた。
勝訴の確率は大きく高まった。
僕を取材する新聞記者の存在はとても大きい。
新聞記者の立場を超えて協力してくれている。
おかげで、取材の通じて、有名な医者達の意見も聞けたし、強力な証拠も集まった。
昨日は、亡き妻の5年祭と祖母の3年祭だった。
その晩夜遅く、突然FAXが送信されてきた。
その新聞記者からだ。
突然死における監察医の論文である。
それを見て、妻の司法解剖のあと、監察院から手紙が来たことを思い出した。
突然死とDNAの関連の研究の為、検体を提供してくれないかとの依頼だった。
FAXで送られて来た資料は、まさにその研究成果をまとめた論文であった。
なんてことだろう。
5年祭を行ったその夜、彼女は論文の数字の中に帰って来たのだ。
また僕は背中を押された。
監察医の論文によれば、薬物の死亡事例の7割が医者の処方薬によるものである。
MDMAや覚せい剤より断然多い。
本家本元の米国を遥かにしのぐ。米国の場合は麻薬がほとんどである。
日本人は、世界で一番薬づけになっている。
気分が落ち込んだら病院へというCMは、製薬会社がスポンサーである。
それを信じて病院に行くと、薬漬けにされる。
多剤大量処方は、もはや日本だけの問題である。
(医療に限った事ではないが、日本は全く自浄能力に欠ける。)
今朝、新聞記者が、別の相談があると電話してきた。
彼女の実家が茨城の農家で、畑をにこにこ畑クラブで使わないかとの申し出である。
年老いた父親が、畑仕事が出来ないからと。
こうして人脈は広がっていくのだと再認した。
こんなふうに、物事は繋がっていないようで、確実に繋がっている。
だから、過去は無かったものと生きていくことは不可能だ。
やはり背負っていくほかない。
5年祭で神主が読み上げる祝詞のなかで、妻が僕の守り神になりたまえという下りがある。
彼女が守り神なのかどうかは、わからない。
僕の行く先ももちろんわからない。
だが不思議な力で、僕が動かされていることは、はっきりと感じる。