つわものどもが夢の跡
廃棄業者が入り、何にも無くなった。
約50坪、10年間使ったオフィス。
ここで、何億円ものビジネスをした。
会社の事務の女の子が、何だか寂しいですねという。
たしかに色んなことがあった。
寂しくないというと嘘になる。
だが、あまり感傷的ではない自分に驚いている。
もう、とっくの昔に、覚悟は出来ていたのだ。
自分のけつは自分で拭く。
このオフィスの撤退で、今回のリストラは全部終了した。
必要な物だけ持っていくことにして、あとは全て廃棄した。
そうしてみると、本当に必要な物など大して無いのだと、身にしみてわかった。
もし、また売上が戻ることがあっても、二度とあのような設備は導入しないだろう。
これは、僕だけのことではない。
今、沢山の経営者が、僕と同じ気持ちでいると思う。
こうして、取捨選択が行われて行くのだろう。
次のオフィスは、いわゆるオフィスビルでは無くて、マンションの一室にしようと思う。
なんなら、社員の昼ご飯は、僕が作っても良い。
今までの、オフィスという概念も捨ててしまおうと思う。
すっかり何もなくなったオフィスを後にしたあと、
古くからの知り合いの女性が、
「長い間ご苦労さまでした。」
と僕に言ってくれた。
沢山の荷物を降ろしたことに気がついてくれたのだ。
その女性のこと、少し好きになった。