久し振りに、某新聞社の役員を訪問。
新しい社屋を建てたばかりで、皇居を真下に見下ろすピカピカのビル。
豪華なので、
「社員が勘違いしませんか?」
と開口一番、そう聞いてしまった。
聞けば、編集局の方からは、同じ懸念が挙がっているそうだ。
先週はいろんな人に会いに行った。
目的は、世間の状況を自身の耳で聞きまわるため。
僕の所にも、最近は、古い知り合い達も、沢山やってくる。
皆、次の手を考えている。
(皆、軒並みオフィスの移転を検討している。)
西麻布男前店の不動産仲介関連の常連によると、コスト削減のためのオフィス移転でちょっとしたバブルになっているそうだ。
その豪華な新聞社の社屋と皆の話を聞き、僕もついに決意をした。
オフィスの移転。
半額以下のオフィスに移転します。
月々のランニング費用は、人件費も含め、これで最盛期の半分ということだ。
以前なら、それなりの格好をつけていなければならなかったが、こうなると少々チンケなオフィスに引っ越しても不都合は何もない。
いや、むしろ執着することの方が、カッコ悪いとさえ思う。
あとは、僕の恵比寿の社宅のみだ。
それで、リストラは終了。
まさに、売上半分体制の出来上がりだ。
もともと、連れ合いを失って、生活が寂しくないように都心に住んだ。
一人暮らし+黒猫との生活は、まったくもって快適だった。
それも、その暮らしも、もう終わりにしようと思う。
やくざと愛人と外人しか住まないマンション。
そんなヤクザの生活ももうお終いだ。
アリスとベランダの植物ともども、引っ越しだ。
ここ一年、現実の厳しさから、少しずつ色んなものを捨てていった。
気がつけば、もうほとんど何も残っていない。
アリスと植物さえ連れていければ良い。
執着を捨ててみれば、あれほど拘ったことが、何でもない事だったと気づく。
次ぎに捨てるのは、都心でのカッコイイ(と思っていた)生活だ。
変わらないと信じていたものも、結局、皆、変わっていく。
色褪せないと信じていたものが、色褪せていく。
運命に流されて行く自分を痛烈に感じる。
やはり、運命には逆らえない。
そこで、運命を呪っても何にもならないことも、もう十分に知っている。
だが、どうせ流されるなら、少しでも行きたい方向に泳いで行きたい。
まだ、ドンづまりではない。
運命が流れているうちは、まだ良いのだ。
残された時間を楽しく暮らすことに全力を注ぐ。
無理なものは無理、出来ることだけ一つずつこなす。
結果は、僕の決めることではない。
昨日、取手に行ってみた。
駅前には、大したものは何もない。
同じ広さのマンションなら、なんと家賃は5分の1だ。
取手から会社まで、ちょうど一時間。十分通える。
駅前に、大きなマンションがいくつか建っている。
十分都会的な生活が送れる。
その駅前のマンションで生活する自分を想像してみたが、全く持って、ピンとこない。
違うだろ。取手に引っ越すとしたら、そんな生活をするためではない。
土いじりをするために引っ越すのだ。
ここに来るなら、土のある生活だ。
取手からさらに筑波まで足を延ばした。
筑波エキスプレスの早いことは早いこと。
普通の山手線で走っている電車が、物凄いスピードで走る。
筑波でも会社まで一時間だ。
駅周辺を散策してみる。
まあ。味もそっけもない街だ。
此処に住むなら、筑波山の麓あたりまで行かなきゃならない感じ。
取手の勝ち(その田舎っぷりが)。
けっして、就農するなんて大それたことを考えているわけでは決してない。
だが、僕の感性は、時代の流れに逆らってはいないと確信している。
これから、もう一つの人生を演じてみたい。
ずっと心の隅に巣くっていた思い。
土のある生活を送る。
田舎育ちの人は、退屈だから田舎は嫌だという。
では、都会に住んで何をやっているのかと問いたくなる。
大したことはやっちゃいない。
都会に長く暮らしているから、田舎に憧れるのだといわれる。
それはそうだろう。否定はしない。
だが、とりあえず、そちらの方向に泳ぎだす。
最初から、結果を憂いても、何も始まらないのだから。