品川駅前の老舗ホテルが営業をやめるそうだ。
(新しい外資系のホテルにも、撤退の噂がある。)
このパシフィックホテルには、思い出がある。
今から、37年前。
ホテルが出来て3年目の時。
僕は、このホテルに宿泊したことがある。
44歳の父と41歳の母、14歳の姉と11歳の僕。
電電公社に勤めていた父親が、会社を辞め東京の私鉄に就職し、岡山の田舎から東京に移り住むことになった。
田舎者の一家四人が、移り住むために東京に来て、初めて宿泊したのがこのパシフィックホテルだった。
僕の東京生活は、あのホテルから始まった。
当時の電電公社は、いわゆる半官半民であった。
父は、準公務員の身分を捨て、44歳で未知の仕事をやる道を選んだ。
今の僕の年齢とあまり変わらない。
そう考えると随分思い切ったことをしたものだ。
東京の人のスピードが速すぎて、田舎者家族は、電車に乗ることさえ苦労をした。
当時の住まいは、小田急線沿いだったのだが、新宿駅で急行に乗ろうと、列の最初に並んで居るにも関わらず、席に座ることさえできなかった。
そのホテルが営業をやめるという。
時の流れの速さを感じて、胸が少し痛んだ。