土曜から一泊、熱海の偕楽園に両親と姉一家を招待した。
若おかみから、お花のアレンジメントを頂いた。
有難い。
総勢6名、名目は、父親の80歳のお祝い。
そこそこの出費となったが、この不安定な経済状況では、次にいつ親孝行できるかわからない。
最大の問題は、両親の年齢だ。
家族は、様々な苦難を乗り越えてきた。
両親は、戦争世代なので、若くして苦労している。
僕も姉も、すでに連れ合いを亡くしている。
それでも、僕が生まれた時から、成人するまで一緒に暮らした一家4人は、未だ誰も欠けていない。
その意味では、恵まれている。
だが、旅行に連れてきて、両親の老いを強く感じた。
二人ともボケてはいないが、運動能力がここ数年で格段に落ちた。
膝が痛い父は、座敷で座るのが厳しい。
立ち上がるのに随分と時間がかかる。
母親も、よくものにぶつかるし、ものをよく喉に詰まらせる。
あと10年という数字が、現実味を濃くする。
長男だからというわけではないのだが、延々と続いてきたこの家系の取りまとめをする役目を負わされているのは自覚がある。だから晩年運なのだと思う。
僕のこの因縁を終わらせる為にも、この親孝行は必要だった。
おかげで、あなたたちのこの子供は、こんなにも逞しく成長したと告げたかったのだ。
安心すれば、急激に歳をとるのはわかっていた。
人は、役割を持って生れ、役割を終えて死んでいくのだと信じている。
相反する思いが、胸を締め付ける。
会計を済ますと母親が3万円くらい包んで僕に渡そうとしてきた。
「それじゃ、意味無くなるよ。」
といって、固辞した。
恩は受けた人には、なかなか返せない。
お金と同じ。大抵は一方通行だ。
帰宅後、宿の女将さんからメールが来た。
お礼と、僕が先に帰った後、僕の父親から、お守りを頂いたとの報告。
明治神宮のお守り、
あの人らしいと思った。