一緒にレッスンを受けてる60代と思われるご婦人がいる。


このご婦人、確実に僕のことが好きだと思われる。

サルサのレッスンは、少しずつパートナーを変えながらやることが多いのだが、僕のところにやって来るとほんとに嬉しそうな顔をする。


お歳に応じて、あちこち固まってて、足腰も多少立たなくなってる感じ。

とても、激しい踊りは無理。

でも、とても楽しそうなのだ。

男性に回されて、女性が両手を挙げてクルクルっと回るやつがあるのだが、

レッスン中、これが、ほんとたまたまなのだが、不意に出来たことがあった。

彼女は、満面の笑みで「嬉しい。」と仰った。


うん、僕も嬉しい。


僕は、子供には厳しいが年配の方(明らかに年配の方ね)にはとことん優しい。

性格の悪い美人よりも、僕は、確実に年配の方を誘う。


彼女は、いつも、レッスンを終えるとサッサと帰る。

フリータイムは、私には関係ないみたいな感じで。


彼女の僕への好意は、以前から感じていて、前回会った時にも今度フリーで踊りに誘おうと心に決めていた。前回は気がつくと居なくなっていて不発。


昨日も、見つけた時には、帰ろうとしていた。


「踊りましょう。」と声を掛けた。

「もう帰るの。」と言ったあと、少し間を置いて「じゃあ。」といって荷物をまたロッカーに入れ始めた。

年配女性と踊らしたら、そうとう上手い部類に入ると思う。


しっかりホールドが僕のモットーなので、難しい技さえ掛けなければ、まったく危険は無い。

楽しくリズムを刻んで、踊らせる。

中途半端に腰がひけてもだめ。大好きなアキちゃんと踊る時と密着度は変わらない。


一曲の半分位踊ったところで、彼女はまた言った。

「嬉しい。」

ほんとに嬉しいのだ。その素直さが僕にはたまらなく愛らしく思えた。


うん、僕も嬉しい。


(誰かさんみたいに調子に乗って’抱いて’とは言うまい。)