ヘッジファンドを売りに来た例のセールスレディに言った。
「僕みたいなバリバリ現役社長のところにヘッジファンド売りに来ても無駄だよ。だって自分の事業に先に投資するもん。人に任せるなんてありえない。」
絶対買わないよといったにも関わらず、なんで買わないかぐらいの勢いで彼女はセールスを続ける。
なかなか粘るなー。
「買いたい時は、自分から買いにいくから。」
そう言うと、じゃあ、口座開設だけでもと粘る。
そこで、僕の頭の中でプツンと神経が切れた。
「判った。じゃあ、あなたの売ってるものの正体教えてあげようか?」
自社製のファンドの分析ソフトで世界一のファンドデータベースを使って、彼女の売ってるファンドを裸にして見せた。このソフトはあまりにも露骨にファンド分析してしまう。
「これでも、投資家に自信を持って薦められると思う?」
皮肉にも、一億円も使って、殆んど売れなかったソフトはこんな時に威力を発揮した。
社内研修では、教えられない事実がそこにはある。
営業の駒として、知らず知らずのうちに顧客を嵌めている事実がそこにはある。
棚に上げてたものを全て目の前にさらして見せた。
現在、日本株に投資するファンドは約500種類ぐらいある。
その内、投資に値するファンドは100種類ぐらい。
TOPIXのETF(TOPIXそのものに投資するもの)より成績の良いファンドは、それしかない。
運用のプロを名乗る投信ファンドの正体は実はそんなものだ。
あなたの財産増やしますと言いながら、確実に損させてる事実を見せた。
彼女は、少し怒りながら帰った。
入ってそこそこの女性の営業には、少し酷かなと思ったが、僕に電話を掛けてよこしたのも何かの縁だろう。
そう言い聞かせてその件は終わりにした。
ところが、次の日、また彼女から電話があった。
「もう一度だけお会いしたいのですが。」
「何の件?」
「言うと会ってもらえないかも知れないので、お会いしてからいいます。」
まあ、洒落たいい回しするじゃないの。
じゃあ良いよと答えた。
そして、その日のうちにまたやってきた。
「実は昨日は、ほんとに意地悪な人だと思いました。でも会社帰ってじっくり考えるとその通りだなと思いました。これでも、同期の中では成績優秀でみんなにちやほやされてるんです。ゲーム感覚に近い感じで今まで営業してきたんです。何だか頭から冷や水掛けられた感じです。へこみました。」
だと。
こりゃあ、やっぱり、ちょっとばかし言い過ぎたか。
ところがね、
「社長とご縁を続けたいので、口座開いてください。」
だと。
いやあ見上げたもんだ。それでこそセールスだ。
君は売れるよ。
スバラスイ!!でも口座開かないよん。