信じられないほど肌の綺麗な女。

秋田美人は肌が綺麗というが、彼女はお隣の山形の出身だ。


彼女は、超高級コールガールそしてAV嬢だ。


前職は、銀座の高級クラブのホステス。

いや、正確にいえば、拘置所経由。


彼女の転落は、ホステス時代のある客との出会いから始まる。

絵に描いたような転落人生。


その客は、タワーと名の付くビルに自分の名をつけるほどの金持ち。

実際、一流会社の実質オーナー。


最初は、その客に見初められた。

そこから彼女の転落が始まる。

まだ、二十歳そこそこの彼女は、その客の玩具にされた。

そして、飽きられると今度は、その客の玩具を街中でスカウトする仕事をすることになる。


そこに目をつけたチンピラのヤクザがいた。

未成年の少女を斡旋し、その客を強請ろうとしたのだ。

だが、ヤクザは、その客の力を過小評価していた。

公権力にも通じたその力は、事件の傷跡を綺麗さっぱり消し去るほどだったのだ。


そして、彼女は強請りの主犯として逮捕される。

逮捕されたのは20歳そこそこの彼女と中年の男2人。

なぜか、彼女が主犯。そんな訳はない。

本当に悪いヤツは他にいる。


彼女には、執行猶予がついた。

情状酌量の余地があったのだ。


拘置所を出てから彼女の日陰生活が始まる。ほんとのワルから身を隠すためだ。


生まれ故郷にも帰れず。女一人で生きていくには夜の仕事しかなかった。

銀座にも帰れない。あとは体を張るだけ。


もう、そこから抜け出したいという彼女に少なからぬ金額を工面した。

それから、しばらくの間、新宿の美容エステで働いていると言っていた。


あるとき急に胸が大きくなった。


お前やったなと云うと、大きくなったと言い張った。

そんなバカなといいかけたが、飲み込むことにした。


(豊胸手術をしたいと思ってる女性にヤメロと言いたい。絶対ばれるし、何より萎える。)


後日、レストランで一緒に食事をしている際、店員を呼ぶために手を挙げたとき、脇の下の傷跡を見てしまった。

見られたたことに気づいた彼女は、手術を認めた。

そして手術後がいかに痛いか滔々と話し出した。


そこで初めて一つの疑問が生まれた。

なぜ、豊胸手術する気になったか?いやする必要があったか?


つまりは、元の仕事続けているのだ。

詰めると彼女は元の仕事をしていることを白状した。

折角、都合した金は無駄になった。

半分わかっていたが、落胆した。

過去は問わないが、どんなに高級でも公衆トイレはトイレだ。


彼女の携帯に不信な電話が掛かってくるようになった。

借金取りの電話だ。

その頻度は日が経つごとに多くなっていった。

聞けば、そうした職業の女性に金を貸す闇金らしい。


借金の内容を紙に書かせた。


笑えない額の借金があるという。

なんと元金は三分の一。それも同僚の借金の肩代わりだという。

支払った額はすでに元金をとうに超えていた。

なんと10日で5割の借金だ。トイチじゃなくてト5。

なんだそりゃだ。


こんなのは、出るとこ出れば払う必要がない金だ。

だが、彼女にはそれが出来ない。

もう表で暮らせない人間だと自分で思い込んでいる。実際そうなのかもしれない。


彼女に掛かってきた電話に替わりに出ることにした。

こういう職業の男の声はどうしてこんなに似ているのだろう。

「もう、もと取ってるのだからいいんじゃないの?」

闇金を恐れず交渉できたのは、堂々としてれば大丈夫という根拠のない自信のおかげだ。

しばらくゴネタが、結局あと数○万で手をうつことにした。

その後の一週間で彼女が体で稼いだ金に足りない分を用意して借金を消した。

ヤクザ映画さながらに直接取引をした。


彼女は、泣きながら、神様みたいと言った。

感謝の言葉を聞きながら、この女は、またやるなと思っていた。


彼女と最後にあったのは、大晦日の晩だっだ。

翌日、山形の実家に帰るという。

もうこれ以上は無理だよと云うと、彼女は、リビングに敷いてある絨毯の上で一晩明かした。


こういう風に寝ると拘置所を思い出すと彼女は言った。


それから、しばらくは連絡もなかった。

その春に一度連絡があった。

案の上、また借金のお願いだ。前よりずっと小さな額だが。


「もう出来ないよ。」というと彼女は簡単に引き下がった。


今、思えば、何処までがホントで何処までが嘘か分らない。


額の小ささと簡単に引き下がった事に良心があると信じたい。