1人暮らしを始めて約5年、ついにその日が来た
クロゴキブリの出現である(笑)
まるで先日の記事が予言になってしまったかのようだ

その夜、俺はいつものようにベッドに横になってネットをしていた
体は部屋のほうに向けている
そして画面を見てると視界の上のほうで何かが動いた
俺はそこに焦点を合わせていないのに瞬時にそれが何であるかピンと来た

そして腹を決めて目を向けると巨大なクロゴキブリが天井のすぐ下の壁にいた
俺はその威圧感に圧倒され、すぐには動けなかった
しかし、でかい、恐ろしいほどでかい、やはり部屋の中で見ると格別である
時間は夜中の3時前なので新聞で叩くわけにもいかない
というか普通に新聞で叩けるなら、ここまで恐れていないわけだ

俺は一瞬あきらめようかと思った
以前茶羽ゴキブリが出たときに買ったゴキブリホイホイがまだ残ってる
それに賭けてみようかと思った
しかし、そのときも3日ぐらい経っても入らなかったので今回も期待は出来ない
それにクロゴキブリと一晩過ごすのかと思うとゾッとする
枕元に来る危険性もあるわけだ

まして無事朝を迎えたとしてもどこかに潜んでるわけで生きた心地がしないだろう
そんなことを考えてるうちにも壁をゆっくりと移動している
色んなことを考えてるうちに逆に恐怖で体が動いた

一応殺虫剤はある
前回外で遭遇したときクロゴキブリに対して無力なことが実証されたあの殺虫剤だ
だが一刻の猶予も許されない
ダメ元で噴射することを決意した
だが噴射後の光景も鮮明にイメージ出来ていた

相手は天井近くの壁である
恐らく噴射したら下に落ちてくるはずである
そのとき体に落ちてきたら・・・
ほぼ真下から噴射するので可能性は0ではない
だが、もう待ってはいられない
俺は意を決して噴射した

すると想定通り下に落ちてきた
だが次の瞬間、俺がこの世でもっとも恐ろしいと感じてる光景が現れた
何とクロゴキブリが落ちながら飛んだのである(笑)
これは1割ぐらい予想していたが、まさか本当に飛ぶとはである
極論すると俺の人生で1番怖かったかもしれない

だが部屋を飛び回るのではなく床に落ちる瞬間、少しだけ飛んだだけだった
だが俺にとってはクロゴキブリが羽を広げるなどあってはならないことである
一瞬凍りついたがここまで来たら待ったなしである

唯一の救いだったのは何もない側に着地してくれたことである
これが反対側の衣装ケースやらゴチャゴチャ置いてあるほうだったらアウトだった
周りに何もないほうへ行ったので、とりあえず噴射し続けた
しかし予想通りまったく効かない
小さい虫ですら一撃で落ちてこないのだから当然と言えば当然である

そして噴射されながらもこっちに向かってきたので反射的に近くにあった雑誌で叩いた
今考えるとなぜそんなことが出来たのか不思議だが体が自然に反応した
恐らくここでケリをつけなければ大変だという気持ちが極限に達したのだろう
結構強く叩いた
深夜で周りに迷惑などという意識は恐怖で完全に消えていた

そして恐る恐る雑誌を上げると、いわゆる汁が出ている状態になっていた
床にも当然付着している
そこで止めを刺してビニール袋に入れればよかったのだが、俺はなぜか上に空のペットボトルを置いた
2Lのペットボトルで下に丁度ゴキブリが収まる空間があるのでそこに閉じ込めた
これが後に厄介な出来事を引き起こしてしまうことになるのだが・・・

俺はとりあえず床に付着した汁を入念に拭き取った
そしてスーパーでもらうビニール袋に入れようとした
すると突然動き出した
もしペットボトルを上に上げたら勢いよく出てきて動き回りそうな元気さである

本当に恐ろしい奴だなあと思いつつ、どうやって安全にビニール袋に入れようか考えた
そしてビニール袋を下に敷いてペットボトルを床に付けたまま移動させることにした
恐る恐る慎重に動かしたが・・・、袋の僅かな段差でゴキブリがつっかえて止まってしまい、
ペットボトルだけが移動してゴキブリの頭の部分が底から出てしまった
体の3分の1がはみ出してる状態だ

これ以上ペットボトルを動かすことは無理だ
かといって動かさなければビニール袋には入らない
だが動かさないで袋に入れる唯一の方法がある
それは完全に止めを刺すことである
そしてそのためには何をするべきかもすぐに理解できた
そしてそれは俺がもっとも避けたい行為であることもである

その手段とは・・・、そう、その状態で上から押し潰すことである
当然その感触は手にダイレクトに伝わってくる
しかしそれしか選択肢がない状況だ
ただそのまま潰すとまた床に汁が付着する
俺は雑誌の固い表紙を破ってゴキブリの下に敷いた

そして意を決してゆっくりペットボトルを床に押し付けた
嫌な感触を覚えながら力を加えていく
そしてペットボトルの底が床に到達した感触を得てゆっくりと上に上げた
ゴキブリはピクリとも動かない
仮に息があったとしても動き回ることはなさそうである
俺はおもむろにそれをビニール袋に入れて口を縛った

1人暮らしを始めてからの最大の死闘が終了した
時計を見ると3時ジャストだった
現れたのが2時45分だったから15分に及ぶ激闘だったわけだ
現れたときの精神状態を考えると、15分後にこの瞬間を迎えられたことは奇跡である

戦いを終えて再びベッドに横になってもしばらく放心状態だった
よく自分にあんなことができたなあと自分に感心していた
極限の恐怖が俺を自然に動かしたのだと思う
並みの恐怖なら体が動かないかもしれないが極限に達すると逆に動くのかもしれない

だが後遺症として窓を開けられなくなってしまった
これまで何でも入って来いと開き直って窓を開けていたが、
いざ入って来られると開けるわけにはいかない
丁度閉めてもギリギリ耐えられる気温になりつつあったので夜は開けないことにした
これは何としても来年はエアコンの水漏れを直さなければなるまい

もっとも玄関から入ってきた可能性もある
もっと言うと先日書いたが帰宅時に追い払ったあのクロゴキブリではないかと思った
必死に殺虫剤で下の階まで追い払ったがまた上まで戻ってきたのではなかろうか
以前茶羽ゴキブリに侵入されたときも直前に玄関付近にいたのを追い払った

つまり彼らは1度この部屋に入るぞと決めたら絶対に入るまで機会をうかがってるのではないか
意地でもその部屋に入るまで別の場所には行かないのではないか
俺はビニールの中で静かに眠っているゴキブリが、
あのときのゴキブリであるような気がしてならなかった

俺はマンションでクロゴキブリを見たことはそれまで1回しかなかった
昔ゴミを出しに行くときにゴミ置き場にいたのを見ただけだ
それが俺の隣の水道メーターのドアに張り付いていて追い払って、
また別のゴキブリが来るとは確率的に考えにくい
しかもあれから間髪入れずにである
やはり意地でも俺の部屋に入るぞと決めていたとしか思えない

今後は近くでゴキブリを見かけたときは最大レベルの警戒が必要になるだろう
だがこれで安心は出来ない
ひょっとするとまだ部屋に別のゴキブリが潜んでる可能性も0ではない
とにかくしばらくはゴキブリの影に怯えながらの生活になりそうである

しかし最初に壁のゴキブリに焦点を合わせたとき10センチ以上の大きさに見えた
本当に恐ろしい生物である
約5年で2度の侵入だから次は当分ないことを願っている

しかし改めて15分で解決できたのは本当に奇跡である
本当に我ながら即時解決出来たのは奇跡の中の奇跡である
あの時、ゴチャゴチャしたほうに逃げていたらと考えると本当に恐ろしい

そう考えると色んな奇跡が重なっての即時解決だったわけだ
これで安心して眠れる・・・と信じたい

しかし、ここまで書いてこう言うのも何だが生き物を殺すというのは気分がいいものではない
この世で1番嫌いと言っても過言ではないが後味はよくない
もちろん普段小さい虫も殺してるが、対象がでかくなればなるほど気分がよくないのである
以前子供がザリガニを釣ってて殺してるのを見て注意しそうになったことがある

自分も昔、釣ってて平気で尻尾をちぎって餌にしてたのにである
本当に身勝手かつ都合のいいオヤジである
殺してから言うなという話だろう

ただ茶羽のときもそうだったが何もない俺の部屋に来たことが、
下手すると来てくれたんだと思いそうで怖いのだ

とにかくもう頼むから来ないでくれと願うしかない