サンソン・フランソワというピアニスト

このピアニストも賛否両論真っ二つに別れるピアニストのひとり。
ホロヴィッツといい、グールドといい、別に好んで意見が真っ二つに分かれるピアニストを好きになっているわけではありませんが、こういう類いのピアニストの演奏を聴くと他のピアニストの演奏はレトルトの食品を食べているようで物足りないというか、嘘臭いとは言い過ぎでしょうか(笑)
こんな人達を基準に考えたら皆、Raison D’Etre(存在意義ってやつですか)なんかすっ飛んでしまいます。(もちろん唯一無二の個人の個性が貴重なのは承知の上で)

サンソン・フランソワもかなり変わった型破りなピアニストです。ですがドビュッシーやラヴェル、フォーレなどのお国モノは他の追随を許しません。またフランスモノのみならず、ショパンをはじめとするロマン派の作曲家でも、この人にしか出来ない粋でハードボイルドな濃厚表現を得意としています。

ジャズピアニストのエロル・ガーナーとも親交があり、即興(ジャズ)で連弾していたというエピソードもあります。また、Y社のスタッフさんがフランソワが弾くジャズを聴いて素晴らしかったという話も、同僚の方から聴きました。

とにかく、その即興的な演奏には天才的なセンスが至る所に散りばめられ、コルトーよりも更に即興的でアクが強い。
でもピアノの先生方にはすこぶる評判が悪い。あんなの真似しちゃダメとか、やり過ぎとか、邪道とか。

その気持ちも分からないではありません。
なにせ音も変えるし、何よりあのアゴーギクが真似出来ないし、理解に苦しむのでしょう。グールドやホロヴィッツが批判されるのと同じ構図です。グールドやホロヴィッツはかなり真面目で真摯ですが、フランソワの方は一言でいえば“やくざ”な演奏ですから強く反論も出来ません(笑)その上ドラッグにも手を出していたわけだから、教育上オススメ出来ないのは尚更。(ジャズが未だにクラシックのある種の人間に下に見られるのも昔のジャズの環境的な成り立ちや、ジャズミュージシャンのドラッグ依存とか関係しているのかなぁ。)そんな時代じゃないと思いますが。

少し道から外れますが、本来クラシックのピアニスト達は即興が出来なければおかしいはずです。それくらい難しいことをクラシックピアニストはやっています。ジャズなんかチョチョイノチョイと弾けるくらい即興力がなければ、クラシック曲なんか太刀打ち出来ません。なのに実際はカデンツさえ弾けないようなピアニストがジャズを下に見る…。
なんかおかしいですよね。昔の大作曲家は勿論、偉大なピアニスト達は皆即興バリバリでパラフレーズモノなんかも凄い事してました。
ヨゼフ・レヴィーン、モーリッツ・ローゼンタール、ゴトフスキー、ギンスブルク、ヤコブ・ギンペル、ジョルジ・シフラ、挙げればキリがありません。こういう人達は決してジャズを下に見たりしなかったでしょう。

話をフランソワに戻します。フランソワのアゴーギクや歌い回しを聴くと、ホロヴィッツのような音色の変化などとはまた違った“得も言われぬ、まさに今生まれている”音楽の魅力に満ち溢れています。こればかりは、いくら表面的に真似しても虚しいだけです。それは非常に高度な音楽的能力を持ち合わせた演奏者の感情と直結した、自然発生的な即興性と直結した表現だからです。

ツィメルマンのように、即興バリバリであるらしいのに、全く即興的でない演奏をするピアニストもいるので、即興が出来るからといって必ずしも即興的に弾けるとも限らないのでしょう。その演奏者の音楽の嗜好にも依るでしょうか。

即興が出来なくても即興的な演奏(表面的で浅いが)は可能ですが、フランソワの場合、即興が出来なければ絶対にあんな演奏は出来ないと断言できます。時々やり過ぎて“やくざな”演奏になりますが、フランソワには『音楽なんて所詮一瞬で消えるもの』みたいな達観した割りきりがあります。固めようとしていないのです。『テキトーでいいじゃん』みないな部分が音楽、もっと言えば人生を“生き生き”させている。

即興的という事と、固めるという事は相反する要素です。たとえ即興が出来ても固めれば“生き生き”しなくなるし、即興が出来なければ固めるしかない。

フランソワの弾くショパンの即興的フレーズなど聴いていると、“粋”としか言いようがなく、これ以上上手くは誰も弾けないだろうと思わせるほど唸ってしまいます。
フランソワの弾くショパンのアンダンテスピアナートと華麗なる大ポロネーズに聴き惚れて高速のインターを何度降り忘れた事か(笑)

クラシックの世界で即興演奏が廃れた現在、昔のサロンでピアノを弾くという行為は今でいえばライブハウスでジャズを弾くようなものかもしれませんね。即興という行為自体がクラシックからジャズに、商業的にも社交的にも移っていった感かあります。そのジャズも嗜むフランソワの演奏が、あたかも現代のショパンのような“粋”な演奏になるのは必然かもしれません。

他にもドビュッシーの、アゴーギクだけでハーモニー感を出す凄さ、木枯らしのエチュードの壮絶さなど未だにアレを越える演奏に出会った事がありません。(速く正確に弾ける人はいくらでもいるでしょうが)

まだフランソワを聴いた事がないという方は是非聴いてみてください♪

他のピアニストがつまらなくなっちやうかも(笑)


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