久しぶりにマウリツィオ・ポリーニの演奏会に行ってきました🎵
ポリーニといえば、私の世代からするとアイドルど真ん中といった感じです。
当時はポリーニ、アルゲリッチ、アシュケナージが三羽烏で、学生時代は皆、多かれ少なかれこの3人から影響を受けました。当時はツィメルマンやポゴレリッチなども全盛期で、百花繚乱といった感じで、リヒテルやホロヴィッツも聴けた時代でした。

私は最初は右も左もわからず、たまたま行ったアシュケナージの演奏会がきっかけで、アシュケナージのファンになりました。アシュケナージの美音で温かみのある演奏に影響を受けた
わけですが、年を追う毎にポリーニのピアニストとしての尋常ならざる凄さがわかるようになり、その魅力に引き込まれていきます。

最初に聴いたのは上野の東京文化会館でベートーヴェンのワルトシュタイン(もしかしたらテンペストも?)やモーッァルトのソナタでした。高校生くらいだったので理解できる耳はなかったですが、一番上の階の席まで突き抜けるような音と、触れれば切れるような研ぎ澄まされた緊張感は強烈に覚えています。もしかしたらそのあまりの緊張度の高さ故に、甘口のアシュケナージに走ったのかもしれません。

アルゲリッチも天才には変わりありませんが、当時の音楽雑誌のインタビューで、プロの現役ピアニスト達が集まり、皆一様にポリーニの常軌を逸した凄さを語っていたのを覚えてます。さすがにわかるんだなぁと感心しました。(中には変な事言うプロもいますが…。)

ポリーニはショパンのエチュードが有名ですが、『現在のピアニスト達はスピードも、もっと早く弾けてポリーニ以上のレベルだ。』と言う人達もいます。おそらくその方達はCD でしか聴いた事がないか、全盛期のポリーニを知らないのでしょう。ポリーニの凄さはテンポや正確さ等の表面的な事より、その集中力の高さ、極度に集中したテンペラメントにあると言っても過言ではありません。その気質は特にベートーヴェンの音楽に如実に現れます。リヒテルの全盛期も凄かったと想像しますが、たまたま同じ時期に二人の、全く同じベートーヴェンの後期ソナタを聴く機会がありました。晩年のリヒテルのPAをかけたような音響も凄かったですが、個人的にはポリーニの、その不器用なまでの実直さと純粋で真っ直ぐなベートーヴェンの方がより印象に残りました。

そして先日の演奏会の感想。前半、シューマンのアラベスクから始まり、同じくシューマンのアレグロ、ソナタ3番と続き、後半はショパンのノクターン2曲、同じくショパンのソナタ3番でした。ポリーニも75~6歳です。最初は不安定ながらも相変わらず速いテンポでコンサートを弾ききりましたが、歳を重ねる毎に感じた音と集中力の劣化はどんどん加速し、 特に今回は、もう寿命では?と感じてしまいました。賞味期限と言ってもいいかもしれません。体調が悪いらしく、残りの日本公演を数日延期したようです。単なる体調不良ならいいのですが…。

その後個人的にはより上のホロヴィッツやホルショフスキをはじめとする数えきれない雲の上のピアニスト達に影響を受けることになるわけですが、何しろ生で聴けたピアニスト達からの影響は計り知れなく、ポリーニはその筆頭にあがり、自分の音楽形成に血となり肉となり、多大な影響を与えてくれました。それらの影響は、ホロヴィッツを生で聴けた貴重な経験をもってしても、消すことは出来ません。

アンコールではしんどそうで、なかなか弾き始めず、ショパンのスケルツォ3番。最初から音を外すも昔のように速いテンポでなんなく弾きましたが、左手のオクターブも力なく、音圧も弱く少し密度のない音でした。
しばらく聴衆の温かいスタンディングオベーションが続き、もう終わりかな?と思ったら突然ショパンの子守歌を弾き始めました。
なにか、とても疲れているけど温かさと淋しさと感謝の入り交じった演奏でした。縁起でもないですが、まるでお別れの挨拶のように…。

ポリーニは自分の音楽において、まるで親のような存在。
どうか長生きして欲しいです🎵



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