ショパンの作品というと、一般的にまず思い浮かぶのが甘美な歌うようなメロディではないでしょうか。

実際、ショパンのメロディセンスは天才としか表現出来ない程の素晴らしさに満ちあふれています。以前に、歌手の方がショパンのコンチェェルトの1番のひとフレーズを歌っていたのを聴く機会がありましたが、時に演歌調だと揶揄される事もあるこの曲が、こんなに素晴らしいメロディだったのかと気づかされたと同時に、歌の表現力に改めて驚きました。ショパンのメロディはもしかしたらピアノより歌の方がその素晴らしさを味わえるのではないかとも思いました。

ショパンの作品の特徴には、この様な天才的ひらめきによるメロディと同時に、非常に複雑な非和声音を駆使した、まるでジャズの即興のようなフレーズが挙げられます。ハーモニーの豊かさは勿論素晴らしいですが、他の作曲家にもハーモニーの豊かな作曲家はたくさんいます。

他の作曲家と違って、ショパンに顕著な特徴と言えば、
個人的にはこのジャズのような複雑なフレーズ
、という感じがします。

いくつか例を挙げたいと思います。

まず2番のコンチェェルトの第1楽章のフレーズ。



fーmollのドッペルドミナント、G9のBディミニッシュコードのコードトーン(和声音)である F D B  A♭ に対して 挟むように下の非和声音、上の非和声音を経由してコードトーンに落ち着く手法です。これは何もショパンに限らず、そこに和音があれば、新しい古いや、ジャンルを問わず、すべての原則です。

どんなに素晴らしい名曲のメロディ、素晴らしいジャズミュージシャンのカッコいいフレーズも基本は同じです。勿論、逸音のような理にかなわないスパイスもあり、またその使い方が天才的な作曲家やミュージシャンの恐るべきところでもあります。

このフレーズのなんとカッコよくジャズ的な事‼
ジャズの生まれる遥か前にこんな事やっていたんですね。

次は第2楽章のフレーズ。



F9onB♭でのフレーズ。トニックの上でドミナントのコードトーンを弾いているわけですが、非和声音の入れ方がまた絶妙。きわめて単純な手法なんですが、こんなの思いつかない‼
神は細部に宿る、という感じです。
なんと即興的なフレーズ‼

次は第3楽章のフレーズ。



A♭からA♭7へと変化する進行ですが、下は半音からアプローチして上のコードトーンを経由してコードトーンへ解決しています。特に7thのG♭と9th のB♭を挟む時がたまりません。

あと、これはハーモニー的な事ですが、第2楽章のいち部分。



As-dur の B♭9 on E♭(ドミナントの上にドッペルドミナントを乗せている。)
この短前打音の装飾音もまた、B♭7の7thの A♭を挟んでいます。ジャズの手法と同じですね。

もうひとつオマケで、前奏曲集の第16番 b-moll。

これはもはやビバップのフレーズではないか❗
なんとジャズ的‼



キリがないので、分析は各自お願いします。

そこで、これらをどう即興的に演奏するか、という問題ですが、本来、即興的な演奏とは、即興が出来なくては感覚的に解らないと思います。

勿論、即興が出来なくても、表面上即興的な
演奏は出来ますし、即興が出来ても即興的な演奏になるとは限りません。しかし即興が出来ると曲への共感の深さが違います。

クラシックを弾く場合(あるいはジャズも)何度も同じ事を、気の遠くなるくらい反復練習するわけですから、予定調和に陥って新鮮な感動が無くなる=即興的でなくなる傾向があります。即興を主体とするジャズでさえ、高いレベルになってくると単なるパターンの組み合わせに慣れてきて、予定調和になり純粋に即興的な演奏は難しいと言います。

結局は自発性(自然発生的な)のあるモチベーションの問題が演奏の良し悪しを左右するという事だと思います。

機械的な反復練習のせいでマンネリ化しがちな曲への感じ方に、違った角度から様々な表情を与えられる可能性を広げてくれる、そんな即興的解釈とも言うべき要素が必要なのかもしれません。

ショパンのフレーズを弾く度に、そんな気持ちにさせられるのは私だけでしょうか?

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