クラシックの名曲を弾くうえで、理論をどう活かすかという問題は非常に深い問題です。

巷にはアナリーゼ(分析)と称し、様々な講座が行われていますが、講座という形態上、どうしても一方通行で、机上の空論的なモノになってしまいます。

ポピュラーやジャズでもないのに、クラシックを弾くのに理論なんて必要なのか?というご意見もありますし、読譜が出来て指が回れば済むだろうという点も、現実的にはその通りだと思います。

いくら理論を解った様に偉ぶっても、曲が弾けなければ絵に描いた餅。アスリートのようにストイックに練習した者勝ちであるのが現状です。

ただ人によっては、より高いレベルの演奏を目指す方々もいらっしゃいます。そういう方々にはお勉強が待っているわけですが、四声体や対位法等の主に机の上でのお勉強は、非常にハードルが高く、シャッターが閉じてしまいがちです。

特にお子さんなど全く受け付けないでしょう。

当教室では、ジャンルを問わず生きた理論を教えるために、試験を受ける受けないにかかわらず、ヤマハのグレードの教材を使っています。私が試験官をやっている事もあり、グレード試験対策としても使用しているのは勿論、ポピュラー、ジャズ、クラシック、全てのジャンルの理論の基礎としても使用しています。

グレード試験自体は、A即興、B即興(モチーフ即興)、初見、楽曲演奏(子供の書いたオリジナル曲とクラシック既成曲、3級は自作曲も。)から成ります。

こんな感じです。





上2つはA即興で、5級はコードネーム付き、4、3級はコードネームがなく、好きにコードを付けます。(ジャズのリハーモナイズみたいなモノ)

まずテーマを弾いてその後、2つ変奏します。

一番下はB即興で、数小節のモチーフを元に曲を作っていきます。その場で作曲する様なモノですが、現場ではある程度型にはめて弾く方が殆どです。勿論長過ぎなければどんな事をやっても自由なのですが、あまりジャズのようなスタイルは好まれないというのが、実状です。(実際ポピュラーやジャズスタイルは稀です。)


教材と使用しているのがコレ。




こう書くと、試験を受けて欲しいみたいで、ヤマハの回し者のようですが、私自信試験官をやるまではグレード試験の事は全くノータッチでした。どちらかというと覚めた目で見ていた処もあり、まさに食べず嫌いみたいな感じでした。

クラシック曲をひたすら腕立て伏せでもやるかの様に練習してきた典型的なピアノ科上がり
だったわけですが、試験官としての場数を踏み、対策講座で経験を重ねる毎に、教材としての底知れぬメリットを実感しました。

ヤマハのグレード試験は、英国王立検定を参考にして、当時の日本音楽界を代表する錚々たる方々が作られたと聞きました。

確かに内容は教材としては素晴らしく、悪口を言う人には会ったことがありません。モーツァルトの簡単な曲のように、子供でも弾ける取っつきやすさをベースに、古典派からロマン派、スタイルによってはそれ以降もカバー出来る内容です。その意味では本家本元の英国王立検定より優れているのでは?とさえ思えます。

プリミティブで自発的な自由即興がなく、問題が画一的で、小節数も決まっていてワンパターンというデメリットもありますが、だからこそ練習問題をこなす上で、和声進行を系統立てて勉強出来る訳です。

ポピュラーやジャズをやる上でも、非常に栄養価が高く、アレンジするにしても質が違ってきます。世の中に出回っているアレンジ譜には、デタラメで、質の低い楽譜もあります。そういうモノも見抜く事が出来、自分で直せる様になりますし、ジャズのスタンダードなどコードを好きに変えて自分でアレンジする時にも引き出しを増やしてくれます。また作曲への足掛かりにもなり、名曲を構成する基礎的な方法論(料理の仕方)も殆どの要素を勉強出来ますし、結果、名曲をアナリーゼする事も出来ます。

そしてタイトルの、クラシックの名曲を弾くうえで理論をどう活かすか?ですが、

これはなかなか実感して貰いにくい、深い問題で、即興でなく、人が書いた曲を弾く時の不自然さをどのように無くしていくか、という事でしょうか。

これはレベルによって、違ってきます。
理論的な事は実感出来ずに、ただ譜読みしてミスなく曲らしく弾くというレベル(この事だけでも大変な事です。)と、
その先に気の遠くなる程の長い道のりがあるわけですが、実感して頂くために、試しに何か好きな簡単なメロディを弾いてみて下さい。ほんのひとフレーズで結構です。今度はそれを違う音から始めて弾いてみて下さい。できるだけ沢山違った音から始めて。

いかがですか?スイスイいかないどころか、単旋律でも苦労すると思います。色々な調で弾いたら、元の音で弾いてみて下さい。何か感覚が違うはずです。まるで自分で本当に音を選んでいる様な感覚を覚えるはずです。

ピアノの場合、他にも声部があるわけですから、尚更大変になります。ですがそれをクリアすると、まるで自分がその曲を作っているかのような共感をおぼえるはずです。

よく、ショパンの気持ちになって演奏しなさい、とかの類いの漠然としたスピリチュアルな方法論でなく、(勿論スピリチュアルなモノが一番大事な事には異論はありませんが。)より地に足の着いた、言わば作曲過程の追体験とも言うべき共感です。それこそが本当の意味で作曲家の気持ちなのではないでしょうか?理論的に共感が湧くと、その結果とても演奏が即興的になり、表現力が豊かになります。勿論複雑になればなるほど、頭は付いていきませんが…。理論も程々が大事という事です。

よくレッスンでは、上手くいかない所を生徒に移調させます。すると嘘のように自然に弾けるようになります。

作曲家は感じた事を、ハーモニー、リズム、メロディ等によって表すわけで、そこには理論が存在する事は厳然たる事実です。ですから作曲をするには理論は必須ですし、ジャズをやりたければ理論が使えなければ形になりません。

しかし演奏家は極端な話、カデンツさえ弾けなくても名曲は弾ける。果たしてこれは自然な事でしょうか?たった今名曲を素晴らしく弾いていた人が、ハッピーバースデーのメロディにコードが付けられなかったら、おかしいと思いませんか?

今ではその辺も随分と変わってきているとは思いますが、現場で実感する事はまだ全然浸透していないなという事です。ピティナのステップ等で参加者に、即興やった事ある人?と聞いても一人二人手を挙げるだけ。おそらく手も足も出ない人の方が多いのではないでしょうか。

クラシックを弾くうえでの生きた理論の実感は、鋭い人はすぐわかりますが、即興する人、あるいは驚く事に作曲する人でさえ感じていない方もいます。

ヤマハのグレード試験も合格したはいいが、それっきりという方も多く、非常に勿体ないなと思います。その先にこそ目から鱗の世界が待っているのに。

楽器を問わず、演奏力をアップしたいという方々にこの事を是非伝えたいです。歌手やエレクトーン、ヴァイオリン等、違う楽器の方を教えた事もありますが、目に見えて上手になります。(勿論その楽器の扱い方はわかりませんが、音楽の作り方をアドバイスすれば技術も向上するのが不思議です。あるいは持てる技術の中でどう音楽的に演奏するかという事にも理論は役立ちます。)それほど生きた理論は大切ですし、有効です。

皆さん、机上の空論ではなく、生きた理論を実践しようではありませんか。🎵(なんか政治家みたいですね。)

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