“即興演奏”と言われてもピンとこない方が結構いらっしゃると思います。

ポピュラーやジャズをやっている方は当たり前の様にやっている事ですが、日本は戦後クラシック音楽をベースに音楽が普及し、音楽教室もクラシック音楽を扱う事が多かったため、なかなか即興で演奏する必要がなかったのではないかと思います。

本来クラシックの世界でも、バッハなどバロックの時代、モーツァルトやベートーヴェンなど古典派の時代、ショパンやリストなどロマン派の時代、ドビュッシー以降の近現代の時代と即興演奏は行われてきましたが、徐々にコンサートでのニーズが減り、その役割をジャズなどのジャンルが引き継いでいった様な気がします。

あとは楽譜が普及していく中で、音楽上の理由で即興の必要性がなくなったという側面もあるでしょう。

即興演奏を一言で説明すると、楽譜なしで、気の赴くままに自分で音を選んで演奏する、という事だと思います。

考えてみれば、一番自然な
音楽の形であり、クラシックの名曲も最初はそういう風に試行錯誤されて最終的な形に落ち着いたわけです。中にはブルックナーの様にちょっと優柔不断で何回も手直しする作曲家もいます。

一口に即興といってもスタイルは様々で、一くくりには出来ませんが、その場で正に音楽が生まれているという新鮮さは共通しています。

ただ厄介なのは、最初はたどたどしく、ある程度自由に演奏出来るようになるには、時間がかかるという事でしょうか。

特にクラシックの場合、大作曲家の名曲と比べてどうしても稚拙で質が落ちてしまう事が原因で、モチベーションが持てなくなる傾向があり、余程の創作意欲がないと、即興(作曲)をやろうとは思いません。

その点、ポピュラーやジャズは敷居も高くなく、コードネームという強い味方もあるので即興の入門としてはうってつけです。

まず曲が短い、基本的なコード進行はシンプル、クラシックの様に一大叙事詩のような仰々しさがないという、即興するにはいい事づくめです。

第一、クラシックのスタイルで一から物語を即興で作って、名曲に劣らない形にするなんて、天才でもなければ無理でしょ。
だいたいが、だから何?みたいな事になるのが関の山です。

そういう意味ではポピュラーやジャズの場合、元の曲をコード進行やリズムを変えたり、メロディを発展させたりと、言ってみればクラシックの変奏曲の様な取っつきやすさがあります。

ですのでちょっとした洒落たコードやカッコいいフレーズなども、クラシックに比べれば遥かにやり易いし、サマになる。クラシックの回路で同じ様な事をやろうとすると、かなり大変ですが、特にジャズ側から山を登ると、わりとお手軽に充実したサウンドを作る事が出来ます。


ポピュラー、ジャズの場合、一応、基本的な情報が書かれたメロ譜があります。

こんな感じです。



メロ譜がない場合は、聴音して自分でメロ譜を書けばいいわけです。このメロ譜を元にコードを変えたり、コード進行に沿って音を自由にその場で作っていくわけです。

生徒さん達で弾き合いしたりして、即興で弾いてメロ譜を見せると、えっ?と狐につままれた様なリアクションが帰ってくると、面白いです。書かれた楽譜しか弾いた事のない生徒さんは、ビックリするみたいです。即興で弾いた生徒さんも得意満面です。

下の音源は、ビル・エヴァンス作曲の “Song for  Helen ” という曲をメロ譜を元に演奏したものです。

同じモチーフを様々なコードで発展させて、どこかスクリャービンのような雰囲気があります。ビル・エヴァンスはスクリャービンからも影響を受け、色々とサウンドを試行錯誤している練習テープが残っていて、晩年のスクリャービンの様なサウンドも聴かれます。

この曲ではコードとリズムしか変えていませんが、前回の記事の “Turn out the Stars ” ではコード、メロディ、リズムと全て変えていますので、ご参考にお聴きください。 



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