前回の記事では、“歌う”という事を理論的に説明しましたが、今回はもうちょっと具体的に説明してみたいと思います。
例えば C というコードがあったとします。コードの音は ドミソ です。
そこに和音がある以上、基本的にはドかミかソに戻ります。
例を挙げます。シ→ド レ→ド シ→レ→ド レ→シ→ド ラ→シ→レ→ド など。
ご覧のように、基本的に下からアプローチするか、上からアプローチするかです。
ラ→シ→レ→ドのように 更にシの非和声音を加えるとより多様性が出てきます。
ですが基本的には、9割以上が シ→ド レ→ド シ→レ→ド レ→シ→ド で出来ています。
これはどんなクラシックの名曲、ジャズのカッコいいアドリブでも一緒で、工夫次第で誰にでも素晴らしいメロディ、フレーズを作れる可能性があります。
これは凄い事だと思いませんか?もちろん半音を加えたり、音階のそれぞれの音にアプローチしてみたり、ポリフォニックにしてみたりとか、何よりコード進行を工夫するという苦労がありますが、メロディを作る方法としては万人にその可能性が開かれているわけです。
そこで“歌う”ということ、に話を戻しますが、上手に歌える人は楽器を問わず、今書いたような事が無意識だろうが意識的だろうが、ちゃんと感じられるように演奏出来ています。
ジャズなんかの高速アドリブなんて、無意識くらいにコードトーンに戻れる能力がないと即興でフレーズは作れません。適当にやってるだけだ、と言う人もいますが、そこには物凄く高度な音楽力があるわけです。
クラシックやポピュラー、ロック等、書いてあるメロディを演奏する時も同じで、要は即興でやっているか、反復練習してやっているかの違いだけです。(実はジャズでさえ膨大な反復練習によるフレーズの組合せをその場で選択している訳ですが…)
コードトーン(和声音)、非和声音(ノンコードトーン)の緊張、解決をどれだけ素晴らしく表現出来るかという事が、上手に“歌える”ことの鍵ですが、そう簡単ではありません。ひとつだけ言える事は、どれも同じ強さで演奏しない、という事だと思います。だいたいずっと弱かったり、ずっと強かったりと、強弱が変化しない事が多く、それがニュアンス不足という印象につながります。ずっと強いほうが、たちが悪いでしょう。(オペラやコンチェルトの様に、バックでオケが強奏していても、音が聴こえるように要求される場合は少し事情が変わりますが…)
いずれにせよ、前提として先ほどの和声音、非和声音を常に意識して(あるいは無意識下で感じられるレベルまで)コードを感じる習慣をつける事が大切だと思います。
コードと和声音、非和声を特定するには、拍の意識が必要になってきますが、それはまたの機会にしたいと思います。
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